中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は6月30日、香港の抗議活動を抑え込むための「香港国家安全維持法」を可決した。同法は、習近平国家主席が同日に署名し、成立した。国営新華社通信は同日深夜、同法の詳細内容を掲載した。専門家は、同法には中国国内の刑法が盛り込まれていると指摘し、中国当局が早くも香港の民主化活動家を一斉に拘束する可能性があるとの認識を示した。
在米時事評論家の章天亮氏は6月30日、YouTubeにおける自身の時事番組「天亮時分」で、「香港独立派」に対する処罰を定める香港国家安全維持法の第20条と第22条は、中国の刑法第105条の内容と全く同じだと指摘した。
章氏は、「当局は刑法第105条を、一字も変えず、香港国家安全維持法に盛り込ませた。中国刑法を香港に直接適用させたことは、香港における高度な自治が完全に失われたことを意味する」と語った。
新華社通信のニュースサイト「新華網」は30日午後11時頃、「香港特別行政区国家安全維持法」の全文を公開した。当局は同法が成立するまで、その草案においても、具体的な内容を公にしたことはなかった。
これによると、「第三章 罪行と処罰」の部分の第20条は、「国家分裂や国家統一の破壊を計画、実施した首謀者または重大な罪を犯した者に対して、無期懲役または10年以上の有期懲役を科す」「積極的に参加した者に対して、3年以上10年以下の有期懲役を、その他の参加者には、3年以下の有期懲役や拘留などを科す」と定める。
第22条では、「中華人民共和国の憲法に確立された中華人民共和国の根本的な制度を転覆し、破壊する」「中華人民共和国中央政権の機関または香港特別行政区政権の機関の機能を妨害し、破壊する」などを計画、実施した首謀者や参加者に対して、「無期懲役または10年以上の有期懲役を、3年から10年以下の有期懲役を、3年以下の有期懲役または拘留を」それぞれ科す。
中国当局は同法の冒頭で、「一国二制度、香港人による香港の統治、高度な自治を貫徹する」とした。
さらに、一部事件の捜査を中国が香港に新たに設ける「国家安全維持公署」が担当し、中国の検察や裁判所が指定した機関が起訴や裁判を担うと定めた。
しかし、章氏は、同法は中国共産党による香港への統制を強調していると非難した。同氏は、中国当局は近日にも、香港の民主化活動家を拘束するのではないかと危惧した。
香港警察は7月1日、国家安全維持法に抗議するデモの参加者30人を違法集会、安全法違反、警察への妨害行為、武器所持の疑いで逮捕した。
(翻訳編集・張哲)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。