米司法省は3日、中国当局の海外ハイレベル人材誘致計画「千人計画」に参加したことを隠し、米国立衛生研究所(NIH)から研究資金をだまし取ったとして、フロリダ大学で教鞭をとっていた中国系の教授を起訴すると発表した。
起訴状によると、リン・ヤン(Lin Yang)被告(43)は、マッスル・マイナー(MuscleMiner)と呼ばれる筋肉組織を調べる医用画像ツールの開発と普及のために、NIHが提供した約175万ドル(約1億8414万円)の助成金を受け取った。2014年9月~19年7月まで、被告は、NIHからの資金で設立されたフロリダ大学の研究プロジェクトの主要研究者となった。同期間中、ヤン被告が資金の管理を任されていたため、大学側などは被告に対して、外国からの資金受領や外国企業の所有権などについて情報開示するよう求めた。
司法省の声明では、ヤン被告は2016年に中国国内で会社を設立し、アメリカの研究活動で得た技術を基に作った商品を中国国内で販売していた。司法省は、研究活動のために米政府は数百万ドルの資金を提供したと指摘した。
起訴状は、ヤン被告は中国当局の千人計画に加わり、西北工業大学で勤務したことを隠ぺいし、NIHに複数回の虚偽報告を行ったとした。また2019年1月、フロリダ大学は教職員全員に対して、中国などの外国政府や企業との関係について、書面報告を提出するよう求めた。ヤン被告は報告書で、中国の企業や大学などとの関わりはないと虚偽の説明を行った。
被告は2019年8月に中国へ渡った後、米国に帰国していない。
中国当局は、海外の優秀な人材を積極的に中国に招致することで、欧米各国の最先端技術を獲得し、軍事やハイテク産業をリードする野心を持っている。
米司法省のジョン・デマーズ次官補(国家安全保障担当)は、「外国資金をめぐる透明性の確保で、連邦政府機関が資源を平等に分配できる」とし、米研究者が外国からの資金提供を開示する必要があると強調した。
次官補はヤン被告について、「100万ドル余りの研究資金を得るために雇用主と連邦政府を故意に欺いた」と非難した。「ヤン被告が得た研究資金は米国民の税金」で賄われているにもかかわらず、「被告は中国政府の研究目標に取り組み、自身の利益を図った」という。
トランプ前政権は、一部の研究者が連邦政府から研究資金を受けながら、密かに外国からも資金を受け取り外国に米技術を提供していることを問題視した。前政権はここ数年、研究機関や大学などに対して外国資金の開示を要求し、虚偽報告を行った研究者を摘発した。米ウォール・ストリート・ジャーナルの報道では、2019年半ば以降、外国政府との関係を隠ぺいしたとして、米連邦検察官は十数件の刑事訴訟を起こした。
(翻訳編集・張哲)
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