報道によると、16日午後に防衛省で行われた日米防衛相閣僚会談のなかで、岸防衛相とオースティン米国防長官は、尖閣諸島の有事に備え、自衛隊と米軍による共同演習を実施することで一致したという。
読売新聞17日付によると、日本側は陸・海・空の自衛隊、米側は海兵隊と陸海空軍が参加する予定。領海侵入を含む、力を背景にした現状変更の試みを繰り返す中国に対して、日米は共同してけん制する狙いがある。
この尖閣有事を想定した演習は、日米防衛相閣僚会談の会見発表では示されていないが、「日米同盟の抑止力・対処力を高めるためには、自衛隊と在日米軍の双方が日米共同訓練を含む各種の高度な訓練の実施等を通じ、即応性を強化していくことが重要」と書かれている。
同日午前には、山田宏議員は参議院外交防衛委員会で、対中国の抑止力強化のため、尖閣諸島の久場島・大正島での日米合同演習実施を提案した。同島は、日米地位協定で定める米国射爆場になっている。
山田議員は、拡張主義をとる中国について、対峙する覚悟を示すことが極めて大事であり、尖閣諸島の日米演習を通じて内外にメッセージを出す必要があると主張した。
日米2プラス2の会談後の共同記者会見では、日米4閣僚は「尖閣諸島に対する日米安保条約第5条の適用を再確認するとともに、同諸島に対する日本の施政を損なおうとする一方的な行動に引き続き反対することを確認した」と発表された。
米、領土争議に踏み込む意見も
山田議員は、2月23日、米国防総省カービー報道官の尖閣諸島の日本領有権を支持するとした発言について触れた。同報道官は2日後、発言は誤りであり、米国は他国の領土争議には立場を明確にしないとの従来の見解に、変更はないとの考えを示した。しかし、山田議員は、中国の拡張主義に対応するため、米政府の伝統的な姿勢にも変化がみられるとした。
同議員は、2019年5月に米上院ではマルコ・ルビオ議員ら有力議員が「南シナ海・東シナ海制裁法案」を提出したことを紹介。この法案は、中国を念頭に、東南アジア諸国が領有権を主張する海域で「平和や安全保障、安定を脅かす行為」をした個人に対して、米国内にある金融資産の凍結、ビザの取り消しまたは申請却下といった制裁を科すものだ。この法案を例に、山田議員は、地域における中国の領土主張を認めないと表明するよう、米国側への働きかけを行うよう述べた。
茂木外相は答弁で、米国は、尖閣諸島をめぐっては日本の立場にたち、緊密に連携していくとの回答があるとした。
台湾防衛
台湾について、岸防衛相は答弁で「我が国の南西地域を含む安全保障・平和と安定のためにも重要」とした。岸氏は、中国と台湾の軍事バランスはますます中国が優勢になり、格差はますます広がっている。当事者間の直接対話による平和解決が望ましいが、日本の領土防衛と国民の命に関わる事態ならば「万全を期す」と、台湾有事の自衛隊の関わりについて含みを残した。
中国が継続的に高い水準で国防費を増加させている。2020年度の台湾の国防費は3512億台湾ドルと約20年間でほぼ横ばい。いっぽう、2020年度の中国の公表国防費は約1兆2680億元で、台湾の約16倍となっている。中国の実際の国防支出は公表よりも大きいことが指摘されており、その差はさらに大きい可能性がある。
16日の2プラス2後の共同記者会見で、南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張および活動への反対を改めて表明した。また、現状変更を試みるいかなる一方的な行動にも反対を表明した。
尖閣諸島については、日本の施政を損なおうとする一方的な行動に引き続き反対することを確認した。台湾については、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。
18日(日本時間19日)、米アラスカ州アンカレジで開かれた米中外交当局トップ会談で、ブリンケン米国務長官は台湾問題を取り上げ、中国を直接批判した。中国側は猛反発した。
(佐渡道世)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。