日米首脳共同声明「新時代の日米同盟」対中姿勢は前政権よりトーンダウン

2021/04/17 更新: 2024/04/22

訪米中の菅義偉首相は、ジョー・バイデン米大統領政権としては初の外国首脳として迎えられ、16日に首脳会談を行った。その後、直ちに共同声明を発表した。日米同盟は「インド太平洋地域と世界平和の礎を築いている」と表現し、海洋権力拡大を続ける中国を念頭にした「自由で開かれた秩序に基づく国際秩序への挑戦に対抗する」と結束を強調。同盟関係の新時代を宣言した。

 (Photo by MANDEL NGAN/AFP via Getty Images)

菅総理とバイデン大統領は、2021年3月の日米安全保障協議委員会(日米2プラス2)の共同声明を全面的に支持。日本は自国の防衛力を強化することを決めた。米国は、日米相互協力安全保障条約の下で、核を含むあらゆる能力を駆使して日本を防衛することへの揺るぎない支援を再確認した。

同条約第5条の尖閣諸島の適用も再確認された。米側の声明では「私たちは共に、尖閣諸島に対する日本の管理を弱体化させようとするいかなる一方的な行動にも反対する」との言葉が含まれた。

また、日米両国は、厳しさを増す安全保障環境に合わせて抑止力と対応能力を強化し、サイバーや宇宙を含むすべての領域にわたる防衛協力を深め、拡大抑止力を強化することに関わっていくとした。

米側は、海兵隊普天間飛行場の継続使用を回避する唯一の解決策である辺野古の普天間代替施設の建設や鹿児島県馬毛島の空母着艦練習場、沖縄からグアムへの米海兵隊部隊の移転を含む、在日米軍再編に関する現行の取り決めの実施に関与していくとした。

中国に対する懸念を共有 ウイグルおよび香港の人権、台湾海峡の平和と安定を明記

日米共同声明によれば、両国は中国の行動がインド太平洋地域および世界へ及ぼす影響について意見交換し、平和と安定を維持するための抑止力の重要性を確認した。経済的な強制力の行使など、国際的なルールに基づく秩序と整合性のない中国の活動に対する懸念を共有した。

両国は、南シナ海における中国の不法な海洋権益の主張と活動に対する異議を改めて表明。国際法によって統治される自由で開かれた南シナ海に対する強い共通の関心を再確認した。

さらに、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸の問題の平和的解決を奨励するとした。また、香港および新疆ウイグル自治区の人権状況に関する深刻な懸念を共有した。

しかし、こうした懸念に対して「日米両国は中国との率直な対話の重要性を認識」「共通の関心事項について中国と協力」と書いた。また、声明冒頭で「多国間主義」を強調し、トランプ前政権のような米主導の対中強硬姿勢からはトーンダウンさせた。

北朝鮮については、完全な非核化を目指すことを再確認し、北朝鮮が国連安全保障理事会決議に基づく義務を遵守するよう促し、国際社会による完全な履行を求めた。米バイデン大統領は、拉致問題の即時解決に向けた米国の協力を再確認した。

インド太平洋地域に関して、日米は、「かつてないほど強力になった」4カ国間戦略枠組み「クアッド(QUAD)」のオーストラリアやインドをはじめとする同盟国やパートナー国との協力を強化するとした。また、ASEAN、韓国との協力を支持した。クアッドについては、インド太平洋地域の国々のワクチン接種の強化と支援に共同で取り組むことを表明した。

日米は、ミャンマー軍および警察による民間人に対する暴力を断固として非難し、暴力の即時停止、拘束されている人々の解放、および民主主義への迅速な復帰を求める行動を継続することを約束するよう求めた。

このほか、共同声明では、日米は次世代通信規格5Gや高度なICTの研究、開発などデジタル分野への投資を表明した。米国はこの取り組みに25億ドル、日本は20億ドルを拠出する。

日米両国は、強固な二国間貿易関係を維持し強化するために、デジタル貿易協力、気候変動対策を支援する貿易政策の策定を推進することを約束した。さらに、知的財産権の侵害、強制的な技術移転、過剰生産能力の問題、貿易歪曲的な産業補助金の使用を含む、非市場的なその他の不公正な貿易慣行に対処するため、二国間、ならびにG7とWTOの中で協力していくとした。

(佐渡道世)

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