安倍前首相の「積極的平和主義」対中抑止と台湾防衛につながる

2021/08/20 更新: 2021/08/20

日本は、台湾の防衛にも関わる南西諸島の軍事力強化を着実に進めている。専門家は、安倍前首相が提唱していた「積極的平和主義」が今日の政権の台湾防衛にもつながっているとし、対中国共産党の軍事拡張への抑止能力をますます高めていると指摘する。

8月はじめ、防衛省は沖縄県石垣島に500~600人規模の陸上自衛隊によるミサイル基地を設置することを発表した。22年度内の開設を目指し、地対空ミサイル部隊や地対艦ミサイル部が配備される予定だ。

匿名を条件に大紀元の取材に答えたオーストラリア国防省の元高官は、石垣島へのミサイル部隊を配備は、多国間軍事力を強固にし、訓練内容も強化されるだろうと述べた。

実際、6月下旬には陸上自衛隊とアメリカ陸軍が最大規模の共同訓練が日本全国各地の駐屯地や演習場で行なわれた。日米双方で合わせておよそ3000人が参加した。

さらに23年までに与那国島に配備される電子戦部隊や、現在鹿児島県の馬毛島で整備されている、米空母艦載機離着陸訓練のための自衛隊施設などもある。電子戦とは、電磁波を使って敵の計画や作戦を妨害することだ。

元高官は「中国がこの海域でますます強硬な姿勢を見せる中、陸上自衛隊の部隊は日本が近年進出している新たな防衛分野である宇宙戦やサイバー戦に力を入れている」と述べた。

また、台湾侵攻の際、中国共産党が用いる軍事行動のための「信号を監視したり妨害をしたりすることができれば、効果的な対抗手段となる」と述べた。

ますます強化される 南西諸島の防衛と台湾への関与

台湾からわずか110キロに位置する与那国島は、台湾の防衛を強化するうえで、戦略的に重要な位置にある。

元米国防省のサイバーセキュリティ政策のディレクターを務めたジョン・ミルズ氏は大紀元の取材に対して、「台湾への射撃支援、後方支援、基地の監視」目的ではこの地域の戦略的価値は高いと見ている。

さらに、八重山諸島における台湾防衛への関与は、太平洋における中国の侵略と侵攻を抑止するうえで、戦略上有効だとした。

最近の研究では、中共の軍事力を増強には、米国をインド太平洋から排除することを目的にしたものがあり、西部に多数の核兵器搭載可能な弾道ミサイル用のサイロを建築しているとの情報もある。

参考:中国、砂漠に大規模なミサイル格納庫を建設 核兵器論争の火種に

そのため、日本の軍事資産が戦略的に配置されることは、台湾を強制的に掌握しようとする中共の野望を同盟国が抑止する上で重要な役割を果たすことになる。

太平洋戦争の「最前線」にある日本

ミルズ氏は、日本国内からの政策的な変化があり日本の防衛や国際社会での地位は進化しているとみている。

ミルズ氏は日本が、日米豪印の4か国戦略枠組み「クワッド(QUAD)」や英国、そしてフランスと協力を強化したのは、地政学的な安定と人権の追求に基づいていると述べた。「同じ関心を持つ民主主義の先進国が集まるのは非常に自然なことだ」と強調した。

また同氏は、日本国内でも「紛争の危機は差し迫っており、最大限の抑止力を示すことが不可欠だという認識が高まっている」と述べた。

この点で、日本の軍事力の強化は、安倍晋三前首相が提唱した「積極的平和主義」に沿っている。これは、多国間の緊密な連携と軍事的準備の向上を通じて抑止力を最大化する安全保障と防衛の戦略だ。

この積極的平和主義は、今年に入ってから初めて台湾防衛に適応された。2021年版防衛白書では、初めて「中国の防衛政策」という章から台湾に関する内容を切り離し、台湾情勢の安定は日本の安全保障と国際社会の安定にとって重要であると明記した。

ミルズ氏は、クワッドに加えフランスやイギリスが協力していくことで、中共の暴力を抑止するための明示的な手段になるとし主張した。

「クワッドは、中国の侵略や強引さを阻止するのには完璧な構造だ」「米国、日本、豪州、インドの4カ国が一緒になれば、非常に強力なチームを作ることができる」

ミルズ氏はまた、英国史上最大級の空母クイーン・エリザベスが7カ月にわたる航海に向けて出港したことや、フランスが対中姿勢を固め始めたことも強調した。

さらに、同氏は6月に中山泰秀防衛副大臣が「民主主義国家としての台湾の独立はどんな犠牲を払っても守られなければならない」と発言したことを紹介した。

「これは深刻な問題だ」「日本人は最前線にいるので、防衛副大臣は非常に強い声明を出した。彼らはそれ(中共の脅威)を知っている」と強調した。


筆者・Andrew Thornebrooke

防衛と安全保障を中心に中国関連の問題を扱うフリーランス記者。ノリッチ大学で軍事史の修士号を取得し、情報ニュースレター「Quixote Hyperdrive」を執筆する。

(翻訳編集・小蓮)