中国当局、価格上昇抑制策と値下げ禁止令を併用 「米サブプライムローン危機の再来」か

2021/09/14 更新: 2021/09/14

中国当局はこのほど、北京市や上海市など大都市の住宅市場に対して価格上昇禁止令を出した。その一方で、中小都市の住宅市場には値下げ禁止令を発動した。専門家は、中国は現在、2007年に始まった米国のサブプライム住宅ローン問題の二の舞を踏もうとしていると警告した。

世界各国のマクロ経済統計データなどを提供するCEICデータは、過去10年間の中国不動産市場の情報を収集した。これによれば、中国不動産価格の上昇率は2013年にピークを迎え、前年比で20%増となった。15年に不動産価格は新たな上昇トレンドの波に乗り、16年の上昇幅は前年比18%増となった。

中国当局はバブルを沈静化するため、各地で価格抑制政策や投機活動の取締りを強化してきた。このほど、北京市、上海市、広州市、深セン市の大都市と、西安や成都市などの中核都市では、地方政府は、新規住宅市場への価格抑制措置を取りながら、中古住宅市場の価格急騰を抑えるための「参考価格制度」を打ち出した。当局が提示した参考価格は、市場の成約価格より安いという。

大量の住宅在庫を抱える湖南省株州市、広東省恵州市などの中小都市では、地方政府は住宅価格の下落を止めるための対策措置を実施している。湖南省岳陽市は8月11日、住宅価格の値下げ幅は15%を上回ってはいけないと明確な方針を出した。値下げ幅が15%以上となった分譲住宅について、市政府が管轄するオンライン上の取引契約システムは関連情報や契約書などを表示しない。

中国人ジャーナリストの王剣氏は、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対し、当局の住宅価格の上昇や下落への介入について「中国当局は、安定維持が最も重要な課題であるためだ」と指摘した。

「中国当局は過去5年間、絶えず市場介入を行ってきた。目的は、住宅市場の過熱化を避けると同時に、価格の暴落を防ぐことだ。しかし、市場介入は最終的に、住宅市場の崩壊を起こすことになる。今、この兆しが表れている」

中国の地方政府は財政上、土地の使用権を企業などに譲渡することで得た土地出譲金に頼っている。「不動産・住宅市場が冷え込むと、地方政府の幹部は非常に不安になるだろう。不動産・住宅価格が下落し続ければ、中国の銀行や金融機関も不良債権などの急増で金融的な不安が起きる」

在米中国人経済学者の李恒青氏は、「住宅価格抑制策も価格下落禁止令も、中国当局のめちゃくちゃなやり方だ。当局は完全に市場メカニズムを無視している」と非難した。

中国不動産開発大手の恒大集団は3000億ドル(約33兆円)以上の膨大な負債を抱え、破産に追い込まれている。業界2位の経営悪化は中国の金融システムに大きなリスクをもたらしている。

王剣氏は、恒大集団の危機について「当局がその元凶だ。中国当局は国内経済に多大なリスクを作り出した」と糾弾。

中国メディア「時代週報」によると、今年に入ってから9月5日まで、中国国内では少なくとも274社の不動産企業が倒産した。平均で1日1社のペースで破たんした。

李恒青氏は、中国当局が現在、開発業者の倒産で銀行の不良債権が急増することを危惧していると推測した。「当局が恒大集団に救済措置を実行しなければ、その膨大な負債は金融市場で雪崩を引き起こす。これは、一部の都市の政府が住宅価格下落禁止令を出した原因だ」と同氏は述べた。

李氏は、中国は現在、十数年前に米国で起きたサブプライム住宅ローン危機と同じような局面に直面しているとの見方を示した。

(翻訳編集・張哲)

関連特集: 中国