「新冷戦はすでに始まっている。中国とロシア対米国だ」米ソ冷戦を経験した元米陸軍中佐、ロバート・マギニス氏が大紀元英字版にこう話した。
トランプ政権は任期の後半、中国の脅威に対抗するために、より強硬な行動を取り始めた。バイデン政権も中国による侵略行為と引き続き対峙し、同盟関係の強化に努めている。
先月、インド太平洋地域の平和と安定を図るため、米英豪による新たな安全保障協力枠組み「AUKUS(オーカス)」が創設された。この動きは、同地域における中国の軍事的覇権への対抗と見なされている。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、米国と中国の「完全に機能不全に陥った」関係を修復するよう提案し、新たな冷戦に発展する可能性があると警告した。これに対し、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、米国は中国との冷戦を望んでいないと断言し、両国の関係を「対立ではなく、競争の関係」と表現した。
これに対して、マイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州・共和党)は、米国は「中国との新たな冷戦の初期段階にある」と主張し、サキ報道官の意見に否定的な見方を示した。
中国は米欧の分断を狙う
米国と英国がオーストラリアの原子力潜水艦保有を支援したAUKUSパートナーシップについて、マギニス氏は「オーストラリアとの同盟は特に驚くことではない」と述べた。同氏は、オーストラリアを南太平洋における米国の「強固な同盟国 」であり、「この地域に非常に良い足場を持っている」と考えている。
豪に潜水艦を提供するために2016年に締結した大型契約が破棄され、フランスは駐米、駐豪大使を呼び戻すなど、激怒した。この外交上のトラブルについて一部のアナリストは、米欧は中国問題をめぐり「溝」が広がっていると指摘している。
元米空軍大佐で国際戦略家のダン・スタイナー氏は、バイデン政権の外交政策は「ビジョンが欠如している」としながらも、AUKUSとの提携は今後の展開を示す重要な兆しだと述べている。
両退役軍人は、AUKUSは米国が中国に対抗するために「アジアにおけるNATO版」を形成する始まりであると語った。
AUKUS設立後まもなくして、米国は日豪印と「クアッド(QUAD)」の首脳会議を開催した。クアッドもインド太平洋地域における中国の軍事力と経済力の増大に対処するために設立された。
中国は、インド太平洋地域に注力するAUKUSとQUADを持ち出して、「米国は昔と違ってヨーロッパを見捨てようとしていると宣伝するだろう」とスタイナー氏は言う。
中国政府は、米仏の間に生じた亀裂を利用して、「世界に向けて、米国は信用できないと言い、米国が欧州から離れていくというストーリーを推し進めようとしている」と同氏は述べた。
スタイナー氏は、米国は中国共産党に対処できるパートナーと同盟を再編成しようとしていると分析した。
核分野でも脅威
スタイナー氏は、このような同盟関係を結ぶには障壁があるとし、「中国共産党は、米国が同盟関係を結ぼうとする国の多くが、すでに中国の経済的な罠にはまっていることを認識している」と指摘する。
スタイナー氏によると、米国がアジアで同盟を結ぼうとする「ほとんどの国」に中国共産党政権は触手を伸ばしており、その中にはインドネシア、日本、韓国、ベトナムなどが含まれているという。
それに対して、1949年にNATOに加盟した国々は、ソ連とは経済的なつながりはなかったという。
「アジア版のNATOを作るのは、第二次世界大戦末期のNATOを作るよりもはるかに難しいだろう」と述べた。
マギニス氏は、中国共産党の脅威が高まっていることを認識した上で、新同盟は「力が急増する中国軍に対抗している」と指摘する。
「中国共産党政権は米国を敵とみなしており、中国とロシアの軍事的活動が世界中で急激に増加している」
中国共産党は、「核の領域で米国に挑戦できるところまで来ている」とマギニス氏は述べた。北西部の都市、玉門付近に120個近くの新しいミサイルサイロを建設し、さらに最西部の新疆ウイグル自治区にも110個のサイロを建設したと、今年半ばに発表した。
中国共産党の脅威が高まるにつれ、中国政府とロシアの同盟関係も懸念されるようになり、新たな冷戦の可能性が高まっているとマギニス氏は述べた。2017年には初の合同海軍訓練を行い、最近では「中国とロシアはアフガニスタンでも立場を一致させている 」と述べている。
「中国共産党政権はその影響力を世界へ拡張している。これは我々がこれまで全く経験したことのない状況だ」と同氏は警告した。
(翻訳編集・李凌)
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