9月下旬にキプロスで開催されたフリーダイビング世界大会「AIDA世界選手権2021」では、試合の放送画面から台湾の国旗が突然削除された問題で、台湾の侯一明選手は同月30日の試合直後、水中で国旗を掲げて世界に台湾をアピールした。
大会の主催者であるアプネア国際振興協会(AIDA)は9月28日の試合で、予告なしに放送画面から台湾の国旗を削除した。台湾の侯一明選手は、30日の試合でダイビングした直後に、水中で放送カメラに向かって台湾の国旗を広げた。
侯選手は4日、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材を受け、「国旗は開幕式で使ったが、試合中に使おうとは全く考えていなかった」と述べた。
同氏は、主催者側による国旗の削除後、世界にもっと台湾をアピールしなければならないという「責任感と使命感を抱くようになった」「今やらないと、あとで後悔すると感じた」と話した。
フリーダイビングは、水中で呼吸するための装置を持たず、1回の呼吸で潜れる距離や深さを競う競技だ。
日本代表団は9月28日、主催者側の台湾代表団への対応に抗議して、日本の国旗も削除するよう要求した。
侯選手は「当初、日本代表団だけが私たちを支持してくれたと思った。米国や韓国など各国の代表団も自国国旗の削除を求めたことを知り、今は感謝しかない」と述べた。
RFAによると、AIDAは中国のスポンサー企業、ベストダイブ(BEST DIVE)からの圧力を受けて、台湾の国旗を消した。同企業は、大会にダイビング用ウェットスーツを提供している。
RFAは、香港人フリーダイビングのダイバーの話を引用し、「AIDAは出場した選手を裏切った」と批判した。AIDAがスポンサー企業の要求で試合の規定を変更したことは「賄賂」に当たるという。
中国当局が香港市民への統制を強める中、「台湾が次の『香港』にならないよう、私たちは台湾の自由を支援しなければならない」と香港人ダイバーは述べた。
日本、韓国、ロシア、米国、オランダ、オーストラリア、フランス、クロアチア、ドイツとスロバキアの各国の代表団はAIDAに抗議した。その後、AIDAは謝罪した。これを受けて、ロシアのオルガ・マーキナ(Olga Markina)選手はフェイスブックで、「選手の私たちには物事を変える力があると証明できた」と投稿し、各国代表団の結束を称えた。
台湾でダイビングのコーチを務める英国人、ドニー・マック(Donny Mac)氏はSNS上で、「AIDAは中国当局を恐れている。各国の選手は中国当局の考え方よりも、自由を大事にしているから、台湾を支持すると表明した次第だ」とRFAに語った。
台湾の蔡英文総統は1日にフェイスブック上で、各国代表団の声援について「非常に感動した」とした。また、大会で台湾の国旗を掲げた選手に対して「行動で世界に台湾を示した」「台湾人の強さと自信を見せた」として、感謝の言葉を述べた。
(翻訳編集・張哲)
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