フランスのル・モンド紙は14日、同紙中国特派員ル・メイトル記者の記事を掲載し、ハリウッドから世界映画界の覇権を勝ち取ろうとする中国政府の戦略を分析した。
中国政府は「5カ年計画」を立て、中国映画の世界的影響力を高め、国内映画市場でアメリカ映画のシェアを低下させようとしているという。
記事は、ハリウッド映画は中国市場ですでに中国の利益と衝突しており、中国当局はハリウッドを追い抜くあらゆる手を尽くしていると評した。近年、中国でハリウッド映画の上映本数が減り続け、今年の興行収入上位30作品のうち5作品、2019年は11作品がアメリカ映画だった。
2020年、中共ウイルス(新型コロナ)の流行により世界中の映画館が軒並み営業停止するなか、中国の映画興行収入は31億米ドル(約3534億円)と、初めて米国の23億米ドル(約2622億円)を上回った。
習近平国家主席が11月に公表した2021〜25年の5カ年計画では、今後5年間に50本の高収益映画を制作し、2035年までに「映画大国」を目指す。主要映画祭で中国映画のメジャー的な地位を築くことも目標として定めた。
一方、2021年、興行収入が1億元(約18億円)の大台に乗った中国映画は34本にとどまった。そのため、中国当局は2025年までに映画館を現在の7万7000軒から10万軒に増やすと躍起になっている。
同5カ年計画では、映画のテーマは「党、祖国、人民、英雄を讃える」ことと定めている。中国に否定的な内容があれば、監督や俳優は市場から追放される。今年のアカデミー賞で作品賞、監督賞を受賞した『ノマドランド』は中国人監督による共産党批判で中国で上映することができない。
これまで中国の大ヒット映画は、民族主義を煽るものや涙頂戴の感動物語が多かった。朝鮮戦争を題材にした反米映画『長津湖』は11月、中国歴代興収1位に並んだ。チケットの公費負担で市民が総動員されたという。
中国共産党の機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」は11月下旬、「興行収入はハリウッドを抜いて世界一の映画市場になったものの、わが国の映画文化はまだ世界的な影響力を持つには至っていない 」と認めた。
(翻訳編集・叶子静)
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