中国で多角的にビジネスを展開していた親中派の米企業家パトリック・ジーンベイン氏はこのほど、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)の取材に対し、中国政府が支配している、あるいは支配できる企業に投資するのは非常に悪いことだと語った。
ジーンベイン氏は米ダラスに本拠を置くタン・エナジー・グループ(Tang Energy Group、TEG)の最高経営責任者(CEO)である。
同氏は、中国大手国営企業「中国石油」と共同で新疆ウイグル自治区や甘粛省の天然ガス、発電事業に取り組み、中国の風力発電産業の発展に貢献したという。国営企業の中国航空工業集団(以下は中航工業)と設立した合弁会社は、世界2位の風車ブレードメーカーに成長した。
ジーンベイン氏の代理人弁護士の話によれば、同氏が率いるTEG社は中国が米国の最恵国待遇を獲得するのに積極的に支援を行い、中国の世界貿易機関(WTO)加盟にも貢献した。
しかし、中国共産党政権と良好な関係を築いたジーンベイン氏は2014年、中航工業と訴訟沙汰になった。
2008年、TEG社と個人投資家は中航工業米国法人と、風力発電事業の合弁会社SWE社を設立した。
WSJによると、ジーンベイン氏は訴状で、中航工業が契約に違反し、SWE社のビジネスを横取りしたと主張した。
TEG社、SWE社及び共同出資者たちは2014年6月、中航工業を相手取り国際紛争解決センター(ICDR)に仲裁を申し立てた。
ジーンベイン氏の代理人弁護士が仲裁委員会に証言したところによると、中航工業はTEG社のノウハウ、人脈、資源、企業努力から利益を得た後、SWE社の上級管理職を引き抜き、CAIGAという別会社を立ち上げた。CAIGAは後に、米国内でSWE社と入札競争を行うなど、ライバル関係に転じた。
翌15年12月、ICDRは中航工業に対して、原告側に7000万米ドル(約80億円)の損害賠償の支払いを命じる裁決を下した。
ICDRは、中航工業の子会社を「親会社の中航工業が完全に支配している」と述べ、「すべて単一の企業として運営している」ため、契約違反の責任を共同で負うべきだと結論づけた。
ジーンベイン氏ら原告側は当初、約22億5000万米ドル(約337億円)の損害賠償を求めた。
WSJによると、中航工業は一度も支払いに応じず、資産を売却し米国の司法管轄外に資金を移転させた。
TEG社の主任弁護士ルイス・T・ルクレア氏は1月5日、WSJ宛てのメールで、「長くて難しい交渉を経て」双方は和解に至ったことを知らせた。和解の内容については明らかにしなかった。
国営企業との戦いを経て、ジーンベイン氏は、中国で安全に事業を行うことはできなかったと感じている。「私は(中国に)戻ることができるが、それは片道の旅になるでしょう」と彼はインタビューで話した。
(翻訳編集・叶子静)
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