欧米諸国から前例のない制裁措置を受け、大手外資が相次いでサービスを停止するなか、ロシア経済は大きく冷え込んでいる。専門家は中国とロシアの複雑な関係性に着目し、中国が経済支援を行う動機はないと分析する。米政府系ラジオフリーヨーロッパ(RFL)が5日報じた。
近年、欧米諸国の制裁措置などに対抗するなか、中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は一定の関係を構築してきた。中国は欧米の対露制裁を批判しているが、表立ったロシア支援には踏み切っていない。
中国政府主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)は3日、ウクライナ情勢の影響を受けた財務の健全性を守るとの名目で、ロシアとベラルーシとの全ての取引を「保留」すると発表した。AIIBによると、ロシア向け投融資は承認ベースが8億ドル(約920億円)。上海本拠の新開発銀行も同日、ロシアとの取引を保留した。
米国財務省の元職員で現在はコンサルティング企業Castellum.AIのCEOを務めるピーター・ピアテツキー氏は、中露の関係は決して強固なものではなく、双方の思惑が複雑に絡み合っていることから、中国が経済支援を行うことに否定的な見方を示した。
ピアテツキー氏はまず、中露の貿易内容に着目した。「ロシアは純輸出国だが、品目はそれほど多くない。鉱物、ダイヤモンド、ウラン、小麦、そして主に石油だが、石油は欧州が主な輸出先だ」「中国が余剰の石油を買い取ることもできるが、その意志はみられない。ロシアの主要輸出相手国は中国だが、中国の主要輸出相手国は米国だ」。
「中国にできることといえば、ロシアの製品をもっと買うことだろう。しかし中国にはそのようにする意志がないようで、ロシアには中国が欲しがるような商品がそれほど多くない」。
ピアテツキー氏はまた、中国とロシアの関係は「非常に成り行き的なもの」だと指摘した。「それはイデオロギーに基づく関係ではない。どちらも米国を嫌い、米国主導の世界秩序を嫌っているが、それを除けば多くの共通点はないだろう」。
中国がロシアに経済援助を行う動機も考慮しなければならない。ピアテツキー氏によれば、中国は経済的に弱体化したロシアから利益を得ており、ロシアの強大化を望んでいない。「中国にとっては動機がない。もし行うとすれば借款が思い浮かぶが、実質的に援助に相当するだろう。いっぽう、強いと思われたいロシアにとっても、ただ援助を受けているだけと思われたくないだろう」。
同氏はまた、ロシア経済への打撃により、同国と深い関係を持つ中央アジアやコーカサス地方にも影響が及び、これらの地域で中国の影響力が拡大する可能性があると分析した。
厳しい金融制裁を受けたロシアは北朝鮮やイランと同様、雇用の減少や収入の減少、渡航制限、物資の欠乏などに見舞われるとピアテツキー氏は述べた。そしてロシア人の生活環境の悪化はヨーロッパが制裁を解除するまで続くと指摘した。
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