ロシアによるウクライナ侵攻からまもなく3週間が経とうとしている。バイデン米政権は国防費削減を重視し核兵器の役割低下を掲げてきたが、これらはいま、現実的な選択肢ではないとして見直される可能性が高いと専門家はみている。
日米関係と安全保障に詳しい明海大外国語学部(千葉県浦安市)の小谷哲男教授は14日、都内で開かれた日本記者クラブの会見でウクライナ情勢と米国の動向に関する分析を示した。
米国は国家安全保障戦略や「核態勢の見直し(NPR)」などを、2月の当初発表予定から延期していると小谷氏は指摘。おそらく内容が見直され、最大の脅威である中国に加えロシア対応が盛り込まれるだろうと分析している。
いっぽう、核兵器の役割減少や国防費削減を重視してきたバイデン政権だが、ウクライナ侵攻後は現状に照らして核兵器に対する姿勢を改める可能性がある。トランプ政権時代に始めた小型核兵器の開発計画の停止も懸念されたが、この計画も継続するだろうと小谷氏は予想している。
こうしたバイデン政権の核関連政策が変われば「米国の核の傘のもとにある日本(の安全保障)にとってプラスになるだろう」と述べた。
小谷氏は中国と台湾侵攻への影響についても触れた。ロシアに示した厳しい経済制裁のような国際社会の連帯や、軍事侵攻の情報を事前に広く公開した米国の的確な諜報能力を中国は目撃していると指摘。中国にとって作戦再考が必要になり、この数年内の台湾侵攻の可能性は「かなり遠のいたのでは」と述べた。また、ウクライナ情勢を中国がどのように推計しているかを日本もよく分析する必要があると強調した。
ロシアの侵攻を受けてウクライナ支援を継続する米国だが、中心的な米国戦略の対象は引き続き中国(共産党)だとの指摘がある。
15日公開の国際経済連携推進センター主催ウェビナーに登壇した久保文明防衛大学校校長によると、米国はロシアを「衰退する帝国」とみなしている。経済力および軍事力を顕著に伸ばし、しかも国際規範を尊重しない中国が米国の安全保障政策の焦点であることには変わりはないとした。
久保氏はまた「米国はロシアによるウクライナ侵略の試みを絶対成功させてはいけないという考えは強い」と指摘。もし成功すれば力による一方的な現状変更が許され、さらには中国共産党による台湾および日本の領土にも関わる将来の諸問題への影響も懸念されると語った。
ロイター通信などによれば、中国がロシアに軍事支援や援助を用意しているとして、米国は同盟国や友好国などに注意を呼びかけたという。こうしたなか、サリバン大統領補佐官(安全保障担当)は14日、伊ローマで中国の楊潔篪・共産党中央政治局委員と会談。7時間にも及んだ会談で、サリバン氏は楊氏に対して中国によるロシアへの協力に関する懸念を「直接かつ明確」に伝え、一定の行動に対しては「厳しい結果」が伴うと警告したという。
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