安倍晋三元首相は22日、台湾の蔡英文総統とオンラインで会談した。ロシアのウクライナ侵攻を非難し、中国共産党を念頭に、インド太平洋地域における力による一方的な現状変更を容認しない姿勢を鮮明に打ち出した。コロナ禍における相互支援や日台間交流などについても意見交換を行なった。
双方の会談は日華議員懇談会(古屋圭司会長)の年次総会の企画として行われた。蔡英文氏は、11年前の福島第一原発事故により設けた東北5県の農産物輸入規制について先月緩和させたことを強調。「台湾と日本が手と手を携えて、インド太平洋地域の経済をより繁栄させていく」ことができるとした。また、日本による台湾のCPTPP(環太平洋パートナーシップ協定)への加盟支援を強く期待すると述べた。台湾はすでに11のCPTPP構成国に加盟申請書を送っている。加盟には最終的に構成国の全会一致での合意が必要となる。
これに対し安倍氏は、「台湾が協定の原則を受け入れ、協定の高い水準を満たすことで、早期に加入が実現することを強く期待している」と語った。
双方はロシアによるウクライナ侵攻および台湾海峡について意見交換した。蔡英文氏は「国際社会の基本原則を根本的に揺るがした」とロシアの行動を非難した。加えて「国家主権を侵害する暴挙はインド太平洋地域においても絶対許されるべきものではない」と述べ、武力行使を辞さず台湾統一の野心を示す中国共産党を牽制。日本とともに台湾海峡の平和と安定の重要性を維持していきたいと話した。
安倍氏は、昨年台湾のシンクタンクのシンポジウム出席時に「台湾有事は日本有事、すなわち日米同盟の有事」だと述べたことを強調。この言葉は「私の危機感の表明でもある」と地域情勢への懸念を改めて示した。 さらには「私が提唱した自由で開かれたインド太平洋構想とは、日本や台湾が位置するこの広大な海が国際法のもと自由で開かれた上でなくてはならないというものだ。一方的な現場の変更はあってはならない」と主張した。
蔡英文氏は、自由で開かれたインド太平洋に台湾は強く同感するとした。「台湾と日本は自由、人権、民主、法の支配といった普遍的な価値を共有しており、 重要な貿易パートナーでありかつ大切な友人」と語り、今後の日台関係のさらなる進展と安倍氏の将来の訪台を期待すると述べた。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。