ロシアのウクライナ侵攻からすでに2か月が経った。ウクライナ軍の激しい抵抗に遭い、ロシア軍は予定の戦果を得るどころか多数の犠牲者を出している。中国共産党がロシア軍の戦訓を踏まえて台湾侵攻計画を修正した場合、中国軍の攻勢はロシア軍よりさらに速く、致命的であると専門家は分析する。米政府系メディア、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が25日に報道した。
今までの台湾侵攻のシナリオは、台湾に対する封鎖と通信網遮断を行い、重要施設と防空システムを破壊して制空権を確保したのち、上陸作戦を行うというものだった。しかし、ウクライナ東部戦線がこう着状態に陥っているため、中国共産党はプーチンと同じ轍を踏まないよう、外国の増援が届く前に戦局を掌握するのではないかと専門家は指摘する。
台湾侵攻計画を調整する中国共産党
アジア太平洋地区の安全保障戦略に詳しい米空軍上級戦略顧問のエリック・チャン(詹益庭)氏はVOAとのインタビューのなかで、ロシアが迅速な軍事行動によってウクライナの領土を占領し既成事実化を狙ったものの、短期決戦に持ち込めなかったと指摘。この現実を見た中国共産党は、長期戦への備えをしているのではないかと述べた。
チャン氏は、西側諸国が短期間でウクライナに対戦車兵器など多くの武器援助を行ったことから、「彼ら(中国共産党)は準備のペースを上げ、事前の警告をほとんど行わずに迅速な攻撃を仕掛けるかもしれない」と述べた。「もし彼らが台湾侵攻を決心すれば、通常考えられるものよりさらに困難で、強力な戦争計画を遂行するだろう」。
ウクライナが見せた強靭さも台湾にとって参考になるという。台湾が食糧や武器弾薬の戦争備蓄を強化し、指導者層と国民の双方が侵略に抵抗する意志を示すことができれば、中国共産党の計画を挫くことができるとチャン氏は強調した。
米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のプロジェクトマネージャーであるボニー・リン(林洋)氏は、中国共産党の台湾に対する武力行使は、ロシア軍以上に「迅速で致命的」な攻撃手段になると考えている。
VOAの取材に対しリン氏は、中国共産党の台湾侵攻は政治的な問題であるため、ウクライナでの戦争は中共の意思決定に影響しないと述べた。いっぽう、ロシア軍の失敗を教訓として汲み取り、中国共産党はその計画を調整する可能性があると指摘した。
スティムソンセンターの中国プログラムディレクターである孫韻氏は、中国共産党は民主主義国による大規模な経済制裁についても考えざるを得ないと述べた。中国共産党は今まで「我々を阻止できるのは米国の軍事介入だけ」と考えていたが、今では非軍事的な代償とは何かを考えているだろう、と指摘した。
中国国防部は15日に台湾および東シナ海でフリゲート艦、爆撃機を含む軍事演習を行った。東部戦区の報道官は「米国が最近、台湾問題に関して頻繁に間違ったシグナルを送っていることに対応するもの」と述べており、米議員団の相次ぐ台湾訪問に反発したとみられる。
孫氏は、中国が台湾侵攻する場合は世界的な世論の動向を伺うと見ている。ロシアによるウクライナの侵略はソーシャルメディアで大きく取り上げられ、世界で多くの国がロシアに対して批判的な姿勢をとるようになった。中国はSNS空間でどのようなシナリオで対抗するかも考えるだろうとした。
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