政府と沖縄県は15日、復帰50周年式典を東京と沖縄で開催した。沖縄会場に出席した岸田氏は式辞で、国民の悲願である復帰を改めて祝い、「第6次沖縄振興計画(新・沖縄21世紀ビジョン基本計画)」をもとに更なる振興発展を実現していくと語った。玉城デニー知事は会場内で開いた会見で、被爆地の広島選出の岸田氏は平和のメッセージを強く主張できる立場にあるとして、中国などの隣国にも「平和外交が国際関係の信頼を築いてきた」との姿勢を示すのが重要だと説いた。
政府と沖縄県、協働して「平和で豊かな島」実現へ
岸田氏は、式典の休憩時間に県の振興指針となる「第6次沖縄振興計画(新・沖縄21世紀ビジョン基本計画)」を玉城デニー県知事から受け取り、政府と県が協働して「平和で豊かな島」の実現に取り組むと述べた。発展計画は沖縄振興策を日本経済発展への貢献と結びつけている。沖縄がアジア地域の玄関口として臨空・ 臨港都市と新たな拠点を形成することや、駐留軍用地跡地の有効利用などを挙げた。
岸田氏は式辞で、「強い沖縄経済」とは沖縄産業の高度化・高付加価値化が重要だと力説した。自身が担当大臣として創設に関与した沖縄科学技術大学院大学(OIST)を取り上げ、同校がバイオや量子など幅広い分野にわたる「世界最高水準の教育研究を推進する」と述べた。同大学は著名科学誌ネイチャーに自然科学分野の論文の質の高さで世界ランキング9位を記録した。
玉城デニー知事は式辞で、2021年に自然遺産登録された沖縄は広大な海洋に囲まれており、「得られる資源と恩恵は未来への可能性を有している」と述べた。また「ゆいまーる(助け合い)」「チムグクル(真心)」といった琉球方言を混ぜながら「アジア太平洋地域の持続的安定と平和に貢献し、県民が描く自立と自主性が尊重された未来に向かってさらに力強くまい進する」と語った。
東京会場では、細田博之衆議院議長、細田山東昭子参議院議長、大谷直人最高裁判所長官(代理出席)らがあいさつを述べた。
細田氏は、国会で、沖縄振興特別措置法による税制上の優遇措置や本土復帰50年決議が行われたことを挙げ、「沖縄の魅力と可能性が最大限発揮されるよう国を挙げて沖縄振興に取り組む」とその決意を表明した。大谷氏は返還後、復帰前に行われた裁判の効力がどうなるのか、といった困難があったことなど、当時の法整備に努力をした関係者の労をねぎらった。
玉城知事、対話重視の姿勢
玉城氏が7日公表し、日米両政府に提出した「平和で豊かな沖縄の実現に向けた新たな建議書」は外交、安全保障環境にも触れている。「わが国を取り巻く国際情勢を踏まえ、アジア太平洋地域において、武力による抑止が国・地域間の緊張を過度に高め、不測の事態が起こることのないよう最大限の努力を払うとともに、平和的な外交・対話により緊張緩和と信頼醸成を図ることで同地域の平和の構築に寄与する」といった対話姿勢の追求を政府に求めている。
いっぽう南西諸島地域の安全保障はかつてないほど厳しい状況が続く。防衛省によれば、少なくとも沖縄返還記念日の15日の直前まで、中国海軍の空母「遼寧」が石垣島の330キロ南で戦闘機や軍用ヘリの発着艦訓練を行っていた。会場内の記者会見では、知事に対して抑止力重視と県民負担軽減の両立について問う場面も見られた。
玉城氏は、今日の「米中が冷戦時代に入るもっと前から米軍基地の荷重負担は解消してくださいと言い続けてきた」とし、改めて米軍基地規模縮小の必要性を訴えていく考えを示した。政府の掲げる抑止力強化については「何を持って抑止力というのか、総合的な観点から捉えたい。政府の掲げる抑止力とは日米同盟による安全保障上の抑止力ということだと理解している」と述べた。
玉城氏は、基地の集中は「中国のミサイルの目標になりうる」との米側の見解があると紹介した上で、政府は平和外交への徹してほしいとの想いを語った。また、岸田氏が広島県出身であることから、中国に対して戦争体験からくる平和追求の姿勢を「堂々と言っていいと思う」と述べた。
岸田氏は同日の会見で「日米同盟の抑止力と普天間飛行場の危険除去」という課題を、県民の声を聞きながら「政府として(解決)努力を続けていきたい」と話した。
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