近年、途上国で港湾開発を進めている中国に対して、海外の港湾を軍事拠点化する可能性が高いとの批判が強まっている。米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)17日付は軍事専門家の分析を引用して伝えた。
中国国防部(省)の譚克非報道官は4月末、中国がソロモン諸島に海軍基地を建設するとの海外メディアの報道は「全くのフェイクニュースだ」と述べた。
中国政府が複雑な国内外情勢の下で今まで海外軍事基地を建設することに「慎重だった」ため、指導者らは公の場で「海外に駐在部隊を派遣しない」と主張し続けてきた。中国海軍が運営する東アフリカのジブチ港に関しても、中国は「中国人民解放軍駐ジブチ保障基地部隊」であるとし、周辺海域の船舶護衛や人道支援などを行うと強調している。
中国政府は2013年、広域経済圏構想「一帯一路」を打ち出した。中国は構想の一部である「21世紀海上シルクロード(一路)」を通じて、南シナ海やインド洋、アフリカ、ヨーロッパの港をつなぐことを計画し、現在、世界各地の海上交通の要衝にある約100の港に投資し、または運営するようになった。専門家は、大半の港は軍事民事併用が可能で、港をさらに建設し軍事力を強化すれば新たな軍事拠点になりうると指摘した。
中国政府の公開文書は海外軍事基地について極力言及しないようにしているが、「戦略拠点」であることを否定していない。中国政府の経済・社会政策指針を示す『第13次5カ年計画要綱(2016~20年)』は、「『21世紀海上シルクロード』の戦略拠点建設を積極的に推進し、沿線にある重要港湾の建設と運営に参与する」とした。
軍事専門家らは、中国のいわゆる「戦略拠点」は明らかに海外の米軍基地とは異なるが、中国に大きな軍事的利益をもたらし、中国の軍事的影響力を拡大したとの見解を示した。
米国の政策研究機関であるアジア・ソサエティ政策研究所(ASPI)のレポートは、中国が資金提供などの様々な手段を通じて、パキスタン、バングラデシュ、ミャンマー、カンボジア、タイなど各国の港と空港を含めて、軍艦の停泊や軍機の離着陸が可能な海外基地を獲得しようとしていると示した。
専門家2人はVOAに対し、中国は軍事作戦に使う海外軍事基地を多く保有していないが、海外の港湾を先に民事用にして将来軍事用に転用することを計画しているのではないかと推測した。これらの港を持つことで、「民間船が外海で中国海軍の軍艦に補給を行うことができるし、港の商用施設でも補給できる」という。
米国防総省が昨年11月に発表した『中国軍事・安全保障発展報告書』によれば、中国の海外拠点戦略は多様化しており、グローバルな海上兵站と基地ネットワークの構築を目指している。
中国軍のジブチ保障基地のほかに、現在パキスタンのグワダル港、スリランカのハンバントタ港、ミャンマーのチャオピュー港、カンボジアのココン港でリアム海軍基地(Ream Naval Base)は中国の「戦略拠点」として注目されている。米ASPIは報告書の中で、この4つの港は「実際の、または潜在的な軍事機能を持つ」と示した。
しかし、戦略拠点などの施設が海外軍事基地と違い、中国軍に提供できる支援が限られていることは中国側の課題だという。
台湾軍事専門家の鄭継文氏は、「スリランカやパキスタンの港は商業的な役割がまだ大きい。中国軍艦はそこで水などの物資を補給できるが、米軍事基地のように弾薬の補給や艦体のメンテナンスはまだ行えない」と述べた。
中国は海外軍事基地が少ないため、大量の補給艦を製造したという。海外基地の建設を控える理由として、中国政府が隣国や国際社会の強い批判を意識していることが挙げられた。
一方、中国の国際問題専門家である沈丁立氏らは、中国が海外で軍事基地を建設するのは「中国の権利だ」と主張し、政府に海外基地の拡大を呼び掛けている。
VOAによれば、米国防総省は昨年末、中国の海外軍事基地建設が今後の流れになるとの認識を示した。
豪州の軍事評論家、クライブ・ウィリアムズ(Clive Williams)氏は、中国政府が途上国における経済、安全保障上の利益を維持するために、将来より多くの海外基地を作る可能性があるとした。
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