経済危機が深刻化するスリランカのウィクラマシンハ新首相は16日、国内のガソリンは底をつき、国の財政は「極めて不安定」な状況にあると述べた。国民に対して長時間停電や生活必需品不足などに備え「犠牲を払う覚悟が必要」と訴えた。
ウィクラマシンハ氏はテレビ演説で「今後数カ月は人生の中で最も困難な時期になる」と警告。生活必需品を輸入するのに外貨7500万ドルを緊急に必要としているほか、医薬品や手術器具などが深刻に不足していると説明した。
また40日以上、輸送船3隻がスリランカの海域に停泊しており、輸送代金を工面できていない状態だとした。
財政が窮迫するスリランカでは、政府に対する抗議デモが暴徒化し、少なくとも9人が死亡、219人が負傷した。これを受け、前首相のマヒンダ・ラジャパクサは9日に辞任。ウィクラマシンハ氏は12日、新首相に就任していた。
経済危機に追い込む中国
スリランカは、中共ウイルス(新型コロナ)の流行に加え、中国共産党が進める広域経済圏構想「一帯一路」のインフラ計画の負債で財政が立ち行かなくなる「債務の罠」に陥っている。
2017年には、同国南部ハンバントタ港の開発を巡って、スリランカが債務を返済できず中国に99年間の運営権を譲渡している。この取引に反対する数千人が大規模な抗議デモを実施した。
スリランカのハルシャ・デ・シルバ議員は15日、「今となってはプロジェクトを元に戻すことはできない。今できることは、負債から脱却する方法を考えることだ。中国と話し合い、解決策を見出さなければならない」と述べた。
スリランカの対外債務510億ドル(約6兆4000億円)のうち、中国への借り入れは約10%を占めている。スリランカは中国に対し、債務の再編成と25億ドルの金融支援を要請していた。スリランカ政府は5月、中国が総額5億元(約96億円)の援助パッケージを拡張したと発表した。
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