都市封鎖が60日以上続いた中国・上海市は、経済活動の早期正常化を図り、企業に操業再開を急ぐよう指示した。しかし、一部の経営者らが5月30日にネット上で公開した書簡は、不合理な政治体制に協力しない姿勢を示し、指導部に政治改革を求めた。
上海市の呉清副市長は5月29日、制限の緩和を発表し、市内のすべての企業に対して6月1日から全面的に操業・生産活動を再開するよう指示した。また、経済復興のために50項目の新施策を打ち出した。
翌日、「上海の一部の経営者と投資家」と署名された書簡は、「寝そべる!操業を再開するが生産は再開しない」と抗議した。
書簡は「2カ月余りに及ぶ都市封鎖の間、私たち上海市と市近郊に住む経営者と投資家はやむを得ず仕事を中止し、その間に時勢をリサーチして分析していた」とした。
「私たち創業者や投資家は事業に成功し、上海市及び全国各地で数千億元の投資プロジェクトを抱えており、数百万人の従業員を雇用しているにもかかわらず、何もできずにいた。本当に悲しい。(中略)上海市の現政府を見て、私たちは目覚めた。私たちはもう屠殺を待つ子羊になりたくない!」
書簡は、上海市は危機的な状況に直面していると示した。
「(上海の)外部環境は四面楚歌と言っても過言ではなく、内部では政府への信用が崩壊している。『封鎖解除』の日は、外資企業が撤退する日であり、中国企業が海外に逃げる日でもある。これから起きる大規模な企業の倒産・破産によって、国民の中国経済回復に対する最後の望みは完全に潰れるだろう」
経営者らは「経済が政治に拉致された」「法治が人治に取って代った」とし、政治がすべての経済活動を決めるという状況に強い不満をあらわにした。
書簡は「政治体制の改革」や「私有財産の不可侵の保障」を求めた。また、防疫・封鎖期間中に違法行為を行い、職権を乱用した各レベルの政府幹部や職員を厳罰し、近年、えん罪をかけられた任志強氏ら実業家への名誉回復と経済補償を行い、すべての良心犯と政治犯を釈放するよう指導部に要求した。
上海の同済大学の元副教授である邱家軍氏は、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対し、「書簡の公開に関わった者は皆、中間層や富裕層の実業家だ」と話した。邱氏は書簡を発起した実業家らと連絡を取り合っているという。
同氏によると、書簡に呼応した経営者は30人余り。経営者らは1週間前に書簡を作成したが、身の安全のため「上海の一部の経営者と投資家」との署名で書簡を公開したという。
フランスに亡命した、天安門運動の元学生リーダーで実業家の万潤南氏はRFAに対し、書簡は今秋開催予定の共産党大会で政治改革が行われなければ、中国共産党という泥舟と共に沈んでいくという企業家らの強い危機感を反映したと述べた。
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