中国の一帯一路プロジェクトが環境、生物多様性に脅威をもたらす恐れ

2022/06/13 更新: 2022/06/13

これまで長い間、メディアは中国の「一帯一路」インフラプロジェクトが世界の環境へ及ぼす脅威について報道してきた。これには、南アジアの森林伐採、セルビアの石炭汚染の増加、メコン川の魚類保有量の枯渇などが挙げられる。

環境悪化はすでに多くの一帯一路開発プロジェクトと直接的な関連性が指摘されている。

一帯一路プロジェクトは地域の生態系にとって重要な固有種を滅ぼしかねない外来種の動植物種が入り込むリスクを高めるため、世界の生物多様性を脅かす可能性もある、と研究者たちは警告している。これは一帯一路プロジェクトが多様な固有種の宝庫である発展途上国を対象としていることが多いことを考えると、特に懸念すべき問題だと、彼らは述べている。

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(University College London)で侵略生物学を研究するティム・ブラックバーン(Tim Blackburn)教授は、2018年に英国と中国の研究チームを率いて、侵入生物種が適応・繁栄するリスクが高い世界中の14のホットスポットを特定した。

ブラックバーン氏は、中国科学院(Chinese Academy of Sciences)の李義明(Yiming Li)氏らとともに、一帯一路プロジェクトが、98の両生類、177の爬虫類、391の鳥類、150の哺乳類を含む800を超える外来侵入種が入り込む可能性によって、どのような影響を地域に与えるかを分析するモデルを作成した。

2019年に雑誌『Current Biology』に調査結果を発表した同チームは、多くのインド太平洋諸国を含む68か国に広がるホットスポットを特定した。ほとんどのホットスポットは、提案されている一帯一路経済回廊の6つに沿って存在する。バングラデシュ、ブルネイ、インド、インドネシア、フィリピン、マレーシア、ニュージーランド、シンガポール、スリランカ、ベトナムをはじめ、フィジーやサモアなどの太平洋諸島には、すべて高リスク地域が含まれている。

ブラックバーン教授はFORUMに対して、「一帯一路の国々は、生物多様性のレベルが高く、固有種が多い国であることが多い」と述べた。

研究チームは、一帯一路プロジェクトが侵入種を前例のない速度で拡散させる可能性があると判断した。

こうした侵入はすでに発生しているが、一帯一路プロジェクトの影響は「その範囲の広さと、将来実現される貿易量の膨大さを考えても、これまでとは一線を画すものだ」とブラックバーン教授はフランス通信社に語った。  

ブラックバーン教授はFORUMに対して、「モノや人の移動が多いほど、種が移動する可能性も高くなる」とした上で、「種は輸送用コンテナに密かに紛れ込む可能性があるし、種子は靴に挟まる。人々はペットを連れて移動するし、ペット販売などの営利目的で種を異動させる可能性もある」と述べた。

外来種は交配等により在来種の絶滅を引き起こす傾向がある、とブラックバーン教授は説明している。これにより生物多様性が低下し、進化の歴史が消滅し、地域の野生生物が脅かされる可能性がある。

同教授は、オーストラリア、日本、ニュージーランドなどの国々は、侵入種を防ぐために比較的厳格なバイオセキュリティ対策を実施している、とする一方で、中国が運営する一帯一路プロジェクトは、特にインド太平洋地域やアフリカの開発途上国において、このような高いレベルのバイオセキュリティを実践しない傾向がある、と述べている。

同氏はさらに、「もちろん、外来種の影響は生物多様性に影響を与えるだけでなく、経済にも悪影響を及ぼす」とした上で、「例えば、中国で発生したウイルスの拡散は、過去数年間に世界的な影響を与えた」と述べた。

一帯一路プロジェクトはすでに世界中の環境悪化をもたらしている。

2021年8月にはオランダのアムステルダムにある欧州南アジア研究財団(EFSAS)が、一帯一路プロジェクトの結果、南アジア諸国は大気汚染と森林破壊の増加に直面していると報告している。

十分な環境制御や再生可能エネルギーなしで工業化を進めることで、一帯一路プロジェクトは地域の都市の大気環境の悪化をもたらしている。欧州南アジア研究財団によると、中国・パキスタン経済回廊と呼ばれる地域では、広範囲にわたる道路網の建設により、かなりの森林伐採が進み、トラックの交通量が増加したため、大気汚染の影響が大きくなっている。

政策アナリストのヴク・ヴクサノヴィッチ(Vuk Vuksanovic)氏は、2021年7月の『Foreign Policy 』誌の論文で、セルビアでは一帯一路プロジェクトが環境影響をほとんど考慮することなく、中国の石炭技術を古い産業施設にもたらしている、と記している。この計画には、コストラツの石炭発電所、スメデレヴォの製鉄所、ボルの銅鉱への中国の投資が含まれている。ヴクサノヴィッチ氏の報告によると、地域住民が製鉄所と鉱山による深刻な汚染に抗議した。

さらに、「中国政府には資源にアクセスして利益を得るという意図もあるが、実際の主要目標は、石炭関連の技術の余剰を売却し、石炭関連の労働力を海外に移転することだ」と記している。

カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムにまたがるメコン川沿いの魚類の減少と一帯一路水力発電プロジェクトの間に相関関係がある、と2019年12月にアセアン・ポスト(ASEAN Post)のオンラインニュースプラットフォームが報じた。報道によると、この減少は河川の流れの変化と魚類の移動を遮断したことに起因し、人びとは生計を絶たれた。

Indo-Pacific Defence Forum
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