安倍元首相は「中国脅威をいち早く認識した国際的指導者」=米専門家

2022/07/14 更新: 2023/06/26

安倍晋三元首相が8日、選挙遊説中に凶弾に倒れ急逝した事件は世界に衝撃を与えた。米専門家は、いち早く中国共産党の台頭がもたらす脅威に気づき、その長期的対応を各国首脳に呼び掛けたことが、安倍氏の最大の功績であるとの見方を示した。

米紙ワシントン・ポストのコラムニストで外交政策の専門家であるジョシュ・ロギン(Josh Rogin)氏は8日、同紙への寄稿で、各国首脳から寄せられた哀悼の言葉は、憲政史上最も長い総理在任期間を記録した安倍元総理への尊敬を反映したとした。 その多くは戦後の東アジア地域の平和、繁栄、安全保障を支えてきた国際秩序を強化するという、安倍首相の姿勢を評価したものだったという。

同氏は、安倍元首相は、急拡大する影響力を背景に地域の平和や国際秩序を損なおうとする中国の野心をいち早く認識し、それに対して行動を起こそうとする「国際的指導者の一人だ」と評価した。

「米国と他国の首脳らがまだ対中関与(エンゲージメント)政策に固執していた時、安倍首相は日本の外交政策を中国との長期的な競争に焦点を当てる方向に転換した」

安倍元首相の外交政策顧問兼スピーチライターの谷口智彦氏はかつて、ロギン氏に対して、中国の台頭に長期的に対抗するためには、日本は3つのことをしなければならないと安倍首相は理解していると語った。つまり、国内経済の強化、米国との同盟関係への再投資、オーストラリアやインドとの外交関係の強化だという。

谷口氏は、安倍元首相が東アジア地域における米国の継続的なプレゼンスが不可欠であることと、米国がこの地域に関与し続けるためには日本の協力が不可欠であることを認識したと指摘。

自由で開かれたインド太平洋」という考えを含む、東アジアにおける米国の現在の戦略や枠組みの大半は、安倍元首相の演説にまで遡ることができる。米国、日本、オーストラリア、インドが構成する枠組み「クワッド」は2007年、安倍元首相の提案の下で創設された。

中国政府はクワッドについて、中国に対抗するための「インド太平洋版のNATO」と反発している。

また、安倍元首相は「日本の国家安全保障機構を改革し、自衛隊の役割を拡大し、米国が離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)を環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的協定(CPTPP)として存続させた」など、大きく貢献した。

特に昨年末以降、安倍元首相は「台湾有事は日本有事。日米同盟有事でもある」と発言し、台湾海峡を巡り中国側をけん制した上、米国に対し「あいまいな(対中)戦略を修正するよう」呼びかけ、日米で台湾防衛のために軍事的に関与すべきだと主張してきた。

「中国政府が自由、民主主義、人権と法治という価値観を破壊しようとする中、欧米諸国は今これらの価値観を守る準備ができた。安倍元首相はこの大きな功績に値する」とロギン氏は評価した。

張哲
張哲
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