23日、内閣総理大臣官邸において「海上保安能力強化に関する関係閣僚会議」が開催された。この会議は、令和4年12月に決定された「海上保安能力強化に関する方針」に基づく取組の進捗状況を確認し、今後の方向性を議論することを目的としている。
一層厳しさを増す安全保障環境
今回の会議の背景には、我が国周辺海域における極めて厳しい情勢がある。主な要因は以下の通りである。
- 尖閣諸島周辺での挑発行為: 中国海警局の船舶がほぼ毎日確認されており、令和6年6月以降は、すべてが砲を搭載した4隻の海警船が領海侵入を繰り返す事案も発生している。また、海警船の大型化・武装化も顕著である。
- 多様化する脅威: 北朝鮮による弾道ミサイル発射、外国漁船による違法操業や領海侵入、ロシア警備船による日本漁船の被だ捕、大規模災害への対応など、海上保安庁が対処すべき事案は多岐にわたる。
- 複雑な安全保障環境: 戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しており、領土・領海・領空を断固として守り抜く体制の構築が急務となっている。

これまでの進捗状況
会議では、瀬口海上保安庁長官より能力強化の進捗が報告された。海上保安庁の予算は順調に推移しており、以下の取組が進められている。
- 巡視船・航空機の増強: 平成28年以降、大型巡視船17隻の増強整備などが進められてきた。令和7年12月時点で、大型巡視船は79隻まで増加している。
- 自衛隊との連携強化: 有事の際の統制要領を踏まえた共同訓練や机上訓練が実施されている。令和7年11月には、長崎県五島灘にて不審船を想定した第32回目となる不審船共同対処訓練が実施された。
- 国際連携の推進: 「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を柱に、ASEAN諸国等への能力向上支援(MCT派遣:海上保安庁の能力向上支援専従班であるMobile Cooperation Teamの派遣)や、日米比合同訓練などが実施されている。
今後の予測と重点取組方針
高市総理は会議の最後、令和8年度以降も海上保安能力を一層強化する方針を示した。今後の予測される主な動きは以下の通りである。
- 装備の更なる高度化: 令和8年度においても大型巡視船の増強を継続するほか、無操縦者航空機(シーガーディアン)の5機体制化に向けた整備が進められる。
- 多角的な国際連携の強化: 日米、日米韓、日米比、日米豪印(Quad)などの枠組みを通じた連携を力強く推進し、関係国へのODAやOSAを通じた支援も継続される。
- 人的基盤と勤務環境の改善: 現場で対応に当たる海上保安官の士気向上を図るため、処遇の向上や勤務環境の改善に重点的に取り組む。
- 「6つの能力」の強化: 尖閣領海警備能力、広域海洋監視能力、強靱な事案対処能力、国内外の機関との連携能力、海洋調査能力、強固な業務基盤能力の6項目を軸とした強化が継続される。
今後、海上保安庁は国土交通大臣を中心に、国家安全保障戦略等の改定の議論を踏まえつつ、自衛隊や警察、外国海上保安機関との連携をさらに深め、切れ目のない対応体制を構築していくことが予測される。
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