日中国交50年、外患に見舞われる日本 安保重視の議員は今や「絶滅危惧種」

2022/09/29 更新: 2022/10/30

日本が中華人民共和国を承認してから半世紀が経った。双方の友好ムードは共産党政権の拡張政策を前に幻滅し、安全保障上の脅威は高まるばかり。

日中国交正常化50周年で終わらせるべきだ」。長尾敬前衆議院議員は中国の弾道ミサイル発射を非難し、政府は毅然とした態度を取るべきだと訴えた。

国家に残された時間は少ない。中国軍が行動をエスカレートさせるなか、日本の専守防衛そのものが試練にさらされていると語った。

ーー日中関係についてどのように考えるか。

日中国交正常化50周年で終わらせるべきだ。中国軍は8月4日の軍事演習で、日本の排他的経済水域(EEZ)に5発の弾道ミサイルを着弾させた。EEZ内ではないものの、与那国島の北側に2発着弾した。さらに、台湾を挟む形でも2発着弾させ、合計9発のミサイルを発射した。

着弾位置からは、台湾と与那国島を標的にしているとわかる。戦争を仕掛けにきているという状況で、普通の国なら激昂するだろう。

通常なら国家安全保障会議(NSC)を招集すべきだが、今回はしていない。過去の事例では、EEZ内への着弾でないにせよ、北朝鮮がミサイルを打てば都度NSS招集していた。考えられないことだ。

日中国交50周年は祝うどころではない。もうこれで終わり、と言ってもいいぐらいの状況である。国葬儀は立派な弔問外交の機会だが、日中国交正常化50年を祝っている場合ではない。

日中国交正常化50周年はつまり台湾との断交50周年だ。台湾は本当に我慢してくれた。「自由で開かれたインド太平洋」構想を実現するためには台湾の存在は必要不可欠だ。絶対(中共に)取られてはいけない。沖縄、尖閣も。

米国のペロシ下院議長が台湾訪問した後、さらに2回にわたって議員団が訪問した。この流れに乗らなければならない。

ーー岸田政権の対中姿勢について。

中国に追随するかのような、前のめり姿勢をとても心配している。最たるものは林外務大臣の続投だ。

ー安倍元首相は日本を良い方向に持っていくことに尽力された。現状を鑑みて今後どうしていくべきだ考えるか。

台湾との連携を強めることだ。関係正常化について真剣に動いてもいいのではないか。大変な妨害が想定されるが。

台湾との安全保障条約を締結することが、自由で開かれたインド太平洋構想を実現する条件となる。中国は絶対良く思わないだろう。

台湾有事は日本有事、これはすなわち軍事的な有事を指している。その対応策を一刻も早く講じなければいけないにもかかわらず、EZZにミサイルが着弾しても、森外務次官が中国大使に電話で抗議したのみ。

ーー中国は逆に日本大使を中国外務省に呼んだ。

ありえないことだ。外務省は中国大使に、外務省に来るよう伝えたものの、中国側が拒否したらしい。そのため電話での抗議となった。とんだ腰抜け外交だ。

G20サミットのとき、日本が台湾海峡の情勢に懸念を示す声明に名を連ねたところ、駐北京日本大使の垂秀夫氏が中国当局に呼び出され、抗議された。中国側は呼び出しているのに、なぜ日本は電話での申し入れなのか。ここに岸田総理の対中姿勢が垣間見える。

ーー安全保障について。

私の専門は医療保険や年金制度など、厚生部門が専門だが、(有事になれば)それどころの話ではない。国が滅べばその上に生活は成り立たない。私の専門分野である社会保障制度も成り立たない。

再来月で60歳の還暦を迎えるが、あと何年生きられるかを考えることがある。自分自身に残された時間を考えるし、このままでは国家そのものに時間がないと感じる。

ーー同じような考え方を持つ政治家、特に国会議員は多いのか。

政治家は皆、それぞれの政治信条や理念を持っている。「長尾はなぜそのようなことを考えているのか」と思われているかもしれない。私自身、他の政治家についてこのように考えることもある。いっぽう、政治家は個人の信念を持っているので、比較は簡単ではない。

ただ言えることは、私たちは少数派だ。絶滅危惧種と言ってもいいかもしれない。

ーー米国や中国では、国防は国家存立の基本だ。

日本は海に囲まれた安全保障環境がある。つまり海が日本を守ってくれた。この観点から言えば、非常に鈍感だと思う。

国境線が陸の上に引かれている国々同士の緊迫感を、私は経験したことない。日本は国境線を見たことがない。

海が守ってくれるから、国内のことだけに専念することができた。しかし今日では、色々なものが海を越えて飛んでくる。あるいはインターネットで繋がっているから、サイバー攻撃を受けることもある。

日本のサイバー攻撃部隊は、攻撃を仕掛ける訓練をしていない。専守防衛の理念のもと、防御に徹する。先制攻撃を想定していないため、攻撃能力そのものがない。

リアルな物理的戦争も、インターネット上のサイバー空間での戦争も、今日では海は関係なくなっている。この点で言えば、意識は低いとみている。

政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。