来年5月19日、日本はG7(主要先進7カ国首脳会議)の議長国として、広島でサミットを開催する。安倍晋三亡き後、日本はどのように世界、そしてインド太平洋地域と関わっていくのか、注目が集まっている。米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が4日、報じた。
米シンクタンク、ハドソン研究所の長尾賢研究員は、安倍元首相は7月に亡くなったが、同氏が主導した外交や国防政策には大きな変化はないとVOAに語った。G7の中で唯一アジアの国である日本に、欧米各国はアジア諸国との懸け橋として期待しているという。
長尾氏は、ロシアがウクライナに侵攻した後、アジアの国は2つのグループに分かれたとした。日韓台などのロシアの侵攻を非難するグループと、ロシアへの非難を避けるグループである。同氏は、日本は両グループの調整役を担う必要があると指摘した。また、欧米は日本が中国に対して果たす役割にも期待感を高めているという。
「一方で、(G7の)中国に対する姿勢は一貫している。この地域の国は、中国の脅威が高まっていると感じ、多かれ少なかれ中国に対抗する必要があると考えている。日本はその間に入って、調整役として動くことができる」
「問題は、中国に対抗する際、明確なビジョンを示さなければならないというところだ。安倍元首相は当時、インド太平洋地域の平和と安全を強調して、日米豪印戦略対話枠組みクアッド(Quad)を確立するきっかけを作った。他のアジアの国に目標を明確にすれば、対応しやすくなる」
同氏は、岸田政権は安倍元首相の外交路線を踏襲するに違いないが、明確なビジョンを打ち出せるかが肝要だとの認識を示した。ビジョンを明白にしなければ、インド太平洋地域における日本の影響力は後退し、日本の国際社会における存在感も下がる。
安倍元首相の国葬は9月27日に執り行われた。参列した米国のカマラ・ハリス副大統領は岸田文雄首相と会談を行い、両氏は中国の台湾海峡での行動を非難し、インド太平洋地域の平和と安定の重要性を強調した。
長尾氏は、米中対立が深まるなか、これまで中立的な立場を取ってきたインド太平洋地域の各国は「近い将来、それぞれの立場とアプローチの見直しを迫られるだろう。日本はこの中でより重要な役割を果たす」と話した。
同氏は、経済安全保障の観点から、東南アジア諸国が日米に傾かざるを得ないとした。米中対立が先鋭化すれば、中国から東南アジア諸国へ工場を移転する外資企業が一段と増えるため、東南アジア諸国にとっては「有利である」。
「日本は数十年にわたる東南アジアでの経験を活かして、東南アジア諸国と欧米諸国の仲介役を務めることができる」と同氏は示した。
米国が主導する米英豪の軍事同盟「オーカス(AUKUS)」と日米豪印の枠組みクアッドは、中国対抗を明確に打ち出しているため、「誰が日本の首相になっても、インド太平洋戦略自体に大きな変化はないだろう。ただ、首相自身の考え方が同戦略の効果に影響を与えるだろう」と指摘した。同氏は、岸田首相は対中姿勢をまだはっきり示していないと述べた。
「台湾問題を含めて、安倍元首相の対中政策は国際社会においても大きな影響力を持つ。日本がこれらの問題に関して、今後も主導権を握ることができるかが課題になる。岸田首相の対中、対台政策があいまいなままで、日本が米国に追随するという立場に成り下がれば、日本は発言権を失うだろう」
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