近頃、台湾海峡における中国軍の脅威が増していることを受け、台湾は重要物資の備蓄を進めている。専門家は、台湾は必要物資や通信環境を維持し、持久戦に持ち込むことができれば勝機はあると分析している。
ペロシ米下院議長の訪台後、中国共産党(以下、中共)の軍事的脅威はエスカレートしている。台湾経済部の陳正祺副部長は6日、英メディア「タイムズ」の取材に対し、台湾は今、食料や燃料を含む重要物資の備蓄をすすめており、中共による台湾封鎖や突発的な軍事的衝突に備えていると述べた。
台湾ではすでにこのような備蓄システムがつくられており、一定期間耐え抜くことができるよう、食料や鉱物資源、化学製品、燃料などの備蓄のチェックを毎月行なっているという。新型コロナウイルスの影響により備蓄の動きが滞っていたが、ここ数か月でペースを取り戻した。
備蓄強化で持久戦に
台湾国防安全研究院国防戦略及び資源研究所の蘇紫雲所長は7日、大紀元の取材に対し、台湾では、長きに渡り中共の脅威に直面してきたため、戦時に備えた法整備がされていると指摘した。
台湾経済部は7日の声明で、陳正祺氏の発言が報じられたことを受け、台湾の備蓄および生産に関わるシステムは台湾海峡の情勢悪化以前からすでに整備されていると述べた。農業委員会(日本の農林水産省に相当)や経済部などの各政府機関では、関連する法律に基づき、食料や燃料備蓄が行われているという。
8月初旬にペロシ氏が訪台し、中共が台湾周辺で大規模な軍事演習を展開した際、台湾経済部は8月3日に燃料の備蓄状況を公開した。石油が約146日分、天然ガスが約10日から11日分、石炭が約39日分とされた。
蘇紫雲氏は、中共の脅威に対応するため、既存の物資備蓄システムの基礎のもと、在庫点検の継続と備蓄量の拡大を提案する。
「これら(食料や燃料)は目に見えるものだが、台湾はこの先、通信網などの目に見えない分野においても備えが必要だ。緊急時における情報通信の確保に加え、海底ケーブルの損傷に備えた衛星網の強化なども必要だ」
また、米ワシントンにあるジョージ・メイソン大学安全研究センターのマイケル・ハンゼカー副所長は先日、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に対し、台湾が中共による封鎖を切り抜ける最善の方法は、食料や燃料、弾薬を備蓄し、持久戦に持ち込むことだと指摘。これにより、米国をはじめとする地域の同盟国が効果的にカウンターを実行できるという。
また蘇紫雲氏も同様の見解を述べている。
「中共の戦略は、他国の介入機会を与えず、短期決戦、『初戦すなわち終戦』を狙うものだ。これに対して台湾は耐え抜く必要があるが、備蓄が多いほど耐久期間も長くできる。凌いだ時間に応じて、他国の防衛協力やカウンター作戦の成功率が上がるだろう」
「ヤマアラシ」防衛作戦
では、実際に戦闘が行われた際、どのように耐久戦を展開できるのだろうか。
米シンクタンク・ランド研究所のジェイソン・マティーニ社長兼CEOは、天敵から身を守るための針毛(とげ)を持つ齧歯類の小動物ヤマアラシに例え、台湾はそのような非対称の防衛能力を持つべきだとした。具体的には、小型で機動性と柔軟性に優れた武器の配備などだ。
台湾の王定宇議員によれば、そのような防衛力は「台湾を飲み込もうとするいかなるものも無傷では済まされず、噛み切ることもできない」ものへと変えるという。
蘇紫雲氏は、これは小国がいかにして大国から身を守るか、という非対称的な戦力だとし、限られた環境や資源の中で、優先配備兵器や戦域設定を行い、双方のパワーの差を埋めることが「ヤマアラシ」作戦だと述べた。
(翻訳編集・王天雨)
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