iPhoneの受託製造を引き受ける台湾の電子機器受託製造大手・富士康科技集団(フォックスコン)の従業員数万人が先月、中国の非人道的なコロナ政策を理由に、河南省鄭州工場から逃げ出した。こうしたなか中国当局は、中国共産党員や元軍人を動員し、労働力不足問題の解決を図ろうとしている。
米紙ニューヨーク・タイムズによれば、中央政府と河南省、省地方政府が協力して、年末年始の供給遅れを避けるためにフォックスコンの従業員を募集して生産を集約させているという。同社は世界のiPhoneの7割を出荷しており、その大半が鄭州の工場で製造されている。
フォックスコンは労働者を引き留めるために、10月から3回の「出勤奨励金増額プログラム」を発表。出勤手当を1日50元から増額し、最近では1日400元と8倍もの手当を付けた。また、幹部や党員にフォックスコンで働くよう呼びかけるだけでなく、元軍人も動員している。
同紙によれば、これまで軍や政府関係者を動員することはあったものの、民間企業に政府が介入して退役軍人を採用するのは「前例のない動き」だと中国の労働事情に詳しい活動家は語った。 従業員のほとんどが35歳以下であることから、活動家は、高齢の退役軍人の多くはフォックスコンの生産ラインの労働条件に適応できない可能性があると指摘した。
アップルは6日に声明を出し、中国の厳格なコロナ政策によりフォックスコン鄭州工場での生産台数が大幅に減少していることを認めた。iPhone 14 ProおよびiPhone 14 Pro Maxの出荷台数は予想を下回る見込みで、製品が購入者に渡るまで待ち時間が長くなるとしている。
鄭州工場は世界最大のiPhone製造工場で20万人以上の従業員を雇用していた。しかし、10月下旬に新型コロナウイルス感染者が確認されたことで、従業員らは強制的に集団隔離された。不満を持った従業員らが封鎖地域から脱出し、インターネット上には、その様子を撮影した動画や画像が多数掲載された。
隔離されていた際、従業員らは劣悪な環境に置かれていた。提供される食事が腐っていたほか、生産量を減らさないよう陽性者の出勤も認められていたという。
中国では厳格な感染症対策ゼロコロナ政策が党大会以降も緩和することなく、国民の不満が高まっている。北京の一部地域では、PCR検査による陰性証明を従来の72時間内から24時間内に規制強化した。小中学校のリモート授業も再開。広州市では14日、移動規制用のバリケードを壊して外に出るなどの暴動が発生した。40日間閉鎖された鄭州大学では16日、学生が広場で集会を開き、学校側に抗議活動を行った。
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