ウクライナ危機を受けて日本の液化天然ガス(LNG)の需給が逼迫している。経済産業省の資料によれば、中国や韓国のほか欧州も積極的な調達競争に出ており、2026年までの長期LNG契約はすべて完売したことが明らかにされた。
「長期契約は全てSold Outと言ってよい。LNGの調達環境は一変。調達も戦時状態と言える」。経産省の資料は日本企業の声を伝え、緊急性を強調した。ロシアの欧州向けパイプラインガスの供給減や、中韓の国家戦略によるLNG調達で、今後も争奪戦は加熱するとの見通しを示した。
長期契約がない場合、買い手は価格が高く不安定なスポット(随時取引)市場に依存することになる。スポット価格は変動幅が激しく長期契約価格の約2倍から4倍になる場合もある。
同省の文書はまた数年間の供給不足の要因として、LNG輸出プロジェクトへの投資不足をあげている。今後10年間で最も需給が逼迫する25年1月には760万トンの供給不足となることが予想されている。
日本は世界第一のLNGの輸入国だ。都市ガスのほか、石炭や石油より環境面のメリットの多いLNGは主な火力発電所の燃料となっている。東京電力では同社火力発電全体の約7割をLNGの発電が担うという。
2022年度冬季の電力需給について、経産省は1日に有識者会議を開催。3月の福島沖地震で停止していた火力発電所の復旧見通しがついたことや、原子力発電所の施設工事完了時期の前倒し等で、安定供給は確保できる見通しだ。しかし「気温低下による需要増に伴う供給力不足のリスク対策は不可欠」とも資料には記している。
LNG責任者、フェリックス・ブース氏はナチュラル・ガス・インテルとのインタビューで「2023年冬の契約に多くのバイヤーが気を揉んでいるだろう。LNG輸入能力の拡大やスポット市場への回帰を背景に需給が引き締まることが予想される」と述べた。
しかし、長期契約の実績を積み上げてきた日本が来年、不安定なスポット価格に依存するような事態にはならないと予想されている。
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