中国国内で感染急拡大が報じられる中、日本や米国など多くの国は水際対策の強化を公表するなどして対応を急いでいる。中国評論家は、これらは単なる感染症対策ではなく、中国共産党政権に対する不信感が根底にあると指摘する。
日米伊仏豪などは相次ぎ中国発の訪問客に対して入国検査義務を発表。モロッコは12月31日の声明で、国籍に関係なく中国からのすべての到着便に対して入国禁止を適用するとした。
感染拡大にも関わらず、中国政府は1月8日からの入国時の隔離義務の解除を発表。中国国内の人々は海外で流行する変異株の免疫を持たず、「新たな変異株誕生の温床になりかねず、再び世界中に輸出される可能性」と英テレグラフは伝えている。
中国の「国境解放」について、「国内の感染拡大の最中にも台湾への軍事的圧力や嫌がらせを忘れない中国政府の『注意逸らし』に、ドイツ政府は警戒している」(独ドイチェ・ベレ)などと強い警戒心をうかがわせた。
中国では昨年ゼロコロナ政策を維持してきたが、台湾に対して延べ1727機もの軍機を防空識別圏に送った。その数は昨年比でおよそ1.8倍にもなる。
国内でも募る不信感 北京では「重症化ピーク」に
ゼロコロナ緩和の前後、中国当局は地方政府と共同して、日本や欧州など海外へチャーター機で「営業団」を派遣し、財政難に苦しむ地方に外国投資を呼び込もうと試みている。中国官製紙も海外組の「契約成功」を盛んに宣伝した。
いっぽう、感染状況を隠蔽して「ただちに流行のピークを通過させて景気回復」を図ろうとする中国当局の態度に、国内からも反発の声が上がっている。
中国のスポーツ評論家でキャスターの黄健翔(ホアン・ジエンシアン)氏も同日、「一つや二つ失敗するのは仕方がない。しかし、全てにおいて失敗するのは、あまりにも難しいことだ。それはまさに万年に一度現れるかどうかの天才ともいえる」と、当局を暗に皮肉る内容を微博に投稿した。
そして、感染者が急増している中国・北京では、初期感染のピークから重症者対応のピークを迎えている。これにともない、病院の対応は発熱外来から救急外来や重症科へと移っている。
北京第一病院の外科医だというSNS微博のアカウントは12月27日の時点で「1日に診た患者433人のうち113人が重症だ」と書き込んだ。死亡した患者は12人で、病床使用率は132%という。
「病床のほかにも、生体情報モニター、人工呼吸器、酸素ボンベなども不足している。医療スタッフは休めず、救急車はひっきなしに重症患者を運び込んで来る。患者が来たら無視するわけにもいかない」と医師は苦境を訴えた。
各地の病院霊安室や火葬場での「パンク状態」や戸籍抹消部門での混雑ぶりなどSNSに投稿される多数の動画や書き込みから、コロナ感染の死者を一桁とする中国政府の公式発表と実際の状況とは乖離していることがうかがえる。
中国評論家の秦鵬氏は自身の動画番組のなかで「『天地と闘い、ウイルスに勝つ』と謳ってきたこのウイルスとの闘争で、中国当局は多大なる資金と資源を費やした挙句、惨敗した。国際社会における中国共産党の信頼は失墜し、国内からも反発の声も広がっている」と指摘する。
「共産党の信用度はすでに氷点下まで低下している。今年、さらなる変革が中国社会で起きる可能性は否定できないだろう」との予想を示した。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。