南太平洋で米中の影響力をめぐる綱引きが続く中、米国はソロモン諸島に新たな大使館を開設した。ブリンケン国務長官は声明で「インド太平洋地域におけるパートナーシップの強化」と説明している。
ブリンケン氏は首都ホラニアに置く大使館について、「地域全体により多くの外交官を配置するのみならず、太平洋の近隣諸国との関与を深め、米国のプログラムや資源を現地の需要と結び付ける」と述べた。
首都ホラニアに設置される新たな米大使館には、臨時代理大使と数人の外交官が駐在するとされる。ソロモン諸島の大使館は予算削減を理由に1993年に閉鎖され、これまで駐パプアニューギニア大使が兼務していた。
米国務省は、昨年中国とソロモン諸島が安全保障条約を結ぶと報じられて以降、大使館を開設する考えを示していた。条約によって、中国軍の艦船が同国に寄港が可能となり軍事活動が拡張すると米豪NZらが懸念を示していた。
人口およそ70万人のソロモン諸島はソガバレ政権誕生後の2019年に台湾と断交し、中国と国交を結んだ。以後、同条約のように中国共産党に傾斜した政策が進む。同年、汚職や貧困に強い不満を抱く民衆がソガバレ首相退陣を求める抗議活動を起こした。この時、中国は暴動対策のために警察を派遣している。
米国務省は昨年12月、下院への報告で「中国は強力にソロモン諸島の政治的・商業的エリートと関わっている。贅沢な約束や返済見通しのたたないインフラ建設の融資などにより、信頼関係は弱まっているとみられる」と述べた。
米中対立と覇権争いによって、南太平洋諸国の指導者たちは選択を迫られている。フィジーでは、昨年12月の総選挙を経て就任したランブカ新首相が、中国と結んだ両国警察間の協力協定の停止を表明した。
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