フロリダ州知事、金融機関に「ESG」禁止する新法提案

2023/02/18 更新: 2023/02/18

フロリダ州のロン・デサンティス知事は、金融機関が投資判断の指針として、環境・社会・ガバナンス(ESG)原則を用いることを制限する新たな法律を提案した。

13日、デサンティス氏はフロリダ州ネープルにあるフロリダ・サウスウェスタン州立大学で開かれた記者会見で、「ESGを重視した投資は受益者の経済的利益にならない可能性がある」とし、金融機関に責任を守るよう求めていくと述べた。

この法案は、銀行や金融機関による宗教的、政治的、社会的信条に基づく差別からフロリダ州民を守ることにもなるとデサンティス氏は述べた。「私たちは、差別をなくすことができると信じており、それが重要な原則だと考えている」

また、金融会社が銀行取引や融資の判断のために信用スコアを使うことも、州が禁止するという。

「これを政治活動ではなく、経済的な意思決定の領域としてしっかり守るつもりだ。まして、現在200億ドル以上の黒字を持つ同州が、これらの法律に違反する企業に資金を預けることもないだろう」

「このようなESGアジェンダを追求している『目覚めた(woke)』金融機関に対して、どのような預金をすることも許されない」とデサンティス氏は述べた。

もしこの法案が通れば、ESGに基づいて財務決定を下す機関にフロリダ州が資金を投じることはないだろう。特定の政治思想に基づいた活動に関わる銀行は、適格な公的預託機関になることは許されない。

デサンティス氏は「私たちはこの提案で、全米のどの州よりも多くのことをしてきたと信じている」と述べる。

「これ(ESGの取り組み)はエリート主導の現象であり、最終的にこの国だけでなく、他の先進国にとっても良い道にはならないだろう。彼らは本気でこれを社会に押し付けようとしているが、民主主義のプロセスでこれを実現するだけの説得力はない。なので、社会の全てのエリート層にこれを広めたがっている。そうすれば、押し付けられた我々はそれを受け入れるしかないからだ。」

「フロリダ州ではありえないことだ。ダボスのような場所に集うエリートに我々が従うことはない」

デサンティス氏は、金融会社がESGに基づく意思決定を通じて締め出そうとした産業の例として、石油やガス、銃、国境警備などを挙げている。

口座を閉鎖された銃器商「生活が一変してしまう」

2016年1月5日、フロリダ州デルレイビーチの銃専門店K&W Gunworksでシンディ・シュナイダーさん(左)に武器を見せるブランドン・ウェクスラーさん(右)。(Joe Raedle/Getty Images)

この日、銃器取引業者のブランドン・ウェクスラーさんは、フロリダ州デルレイビーチにある自分の店が、このような政策によって廃業に追い込まれそうになった経験を語った。ある日、彼が米国の大手金融機関ウェルズ・ファーゴの支店に行くと、25年間利用していた自分の口座の閉鎖を窓口で告げられたという。

「銀行口座が閉鎖されたら、生活が一変してしまう」とウェクスラーさんは述べた。確認にあたった顧客サービス担当者からは、口座からお金を引き出すのに1ヶ月かかると告げられたという。なかには、彼のビジネス用の口座と個人利用の口座、さらには娘の養育費に係る元妻との共同口座が含まれていた。

ウェクスラーさんが口座封鎖の理由と問うと、彼らは 「ビジネス上の判断だ」と答えたという。

一週間後、彼が受け取った手紙には「当銀行は特定の業種には融資しない」と書かれていた。さらに、銀行によるリスク分析の結果を告げるもう一通の手紙には、「あなたにここから出て行って欲しい」といった内容があったという。「全く話にならない」とウェクスラーさんは振り返った。

ウェルズ・ファーゴの広報担当者は、次のように述べたという。「ウェルズ・ファーゴには、銃器会社との取引に反対する方針はなく、銃器事業者にも金融サービスを提供している。今回は、顧客に関連するリスク分析の結果に基づき、口座の閉鎖を決定した。我々の判断は業種に基づいているわけではない」

銀行側が示唆した「リスク」について、ウェクスラーさんは逮捕歴もなければ、手形を不渡りにしたこともなかった。その後、別の銀行で口座を開くこともできたという。

「彼らがしたことは間違っていた。」とウェクスラーさんは語った。

ウェクスラーさんに続いて、コリアー郡保安官事務所のトム・ムーア警部補が自身の経験を語った。「州が運用している私の年金が、実際には収益率とは全く関係のない過激な活動を支援していたことを知り、非常に悔しい思いをしている」と述べた。

「自分の年金を運用している投資家が、投資収益の最大化を最優先事項とせず、ESGや対中投資、そして選挙では通らないような政治的アジェンダを推進する差別的な企業への投資を行なっていると説明された」

2017年9月9日、ハリケーンがフロリダを襲うなか、テーブルゲームを楽しむ退職者たち(NICHOLAS KAMM/AFP/Getty Images)

フロリダ州上院議長のキャサリーン・パシドモ氏は、「デサンティス知事は、私たちが願っていることをやってくれている。大人しい人ではできないことを勇気を出してやっている」と、知事に敬意を表した。

また、フロリダ州下院議長のポール・レナー氏は、ESGに基づく意思決定が化石燃料産業を攻撃し、石油・ガス生産への投資を抑制していると非難した。

「我々は70年代から製油所を建てていない。バイデンがベネズエラに行って燃料をねだるなんてどうかしている」

「ESGを推進するブラックロックのような資産運用会社は、人々からお金を預かり、せせこましいイデオロギーの方向に投資する。彼らはあなたの声を代弁なんかしない。デサンティス知事が言ったように、国連やダボス会議の場では、我々の価値観ではなく彼らの価値観に基づいて議論が行われている」とレナー氏は語った。

フロリダ州知事事務所は、文書の中で次のように述べている。「ESGは米国経済と個人の経済的自由に対する直接的な脅威である。特定のイデオロギーに従わない者を差別しようとする企業エリートの試みは、フロリダでは非合法化されるだろう」

(翻訳・大室誠)

大紀元記者。フロリダ州知事ロン・デサンティス周辺の問題を中心に取材を行っており、2022年の中間選挙も密着取材した。フロリダとニューヨーク州北部の新聞社で経験を積み、現在はアトランタ周辺に在住。
関連特集: アメリカ政治