米国で、新型コロナの予防接種状態に関する、新たな医療用診断コードが追加された。
その1つが、「新型コロナワクチン未接種」を示すコードだ。
この新たなコードは、米国疾病対策予防センター(CDC)によって昨年導入された。概要を説明した文書によると、コードは「患者が新型コロナワクチンを1回も接種していない場合に割り当てられる」という。
コードはもう1つある。部分的接種、あるいはワクチンを少なくとも1回は接種しているが、CDCの「完全接種」の定義を満たすのに十分な回数は接種していない状態を示すコードだ。
CDCによれば、これらのコードは、「予防接種を受けていない人、あるいは部分的にしか受けていない人を追跡すること」を目的としているという。
一方、専門家らは、これらのコードが国際疾病分類(ICD)にそぐわないと指摘している。ICDには、病気の診断内容と医療機関での受診理由が記載される。
イェール大学公衆衛生大学院の疫学名誉教授、ハーヴェイ・リッシュ博士は、大紀元の取材に対し次のように述べている。「彼らは、予防接種を受けていない人が、あたかも危険に晒されているかのように扱っており、医療上のリスクに晒されているとして、記録する価値があるかのように扱っている。私の知る限り、そんなことは一度もなかった」
CDCは、本記事に対するコメント要請に応じていない。
CDCの提案
CDCは、2021年9月に国際疾病分類第10改訂版(ICD-10)調整・整備委員会の会議において、ICDにこのコードを追加することを提案した。
CDC医務官のデヴィッド・バーグリング博士は、この提案について検討した会議で、次のように述べている。
「ここ数ヶ月間に実施された予防接種は、人々に予防効果をもたらした。しかし、予防接種を受けていない人や部分的接種者を追跡できるようにすることに、関心が寄せられている。」
「現時点で、罹患率と死亡率に重要な修正可能なリスク因子があると考えられる。これを追跡できるようにすることは、臨床的な理由から関心が寄せられているだけでなく、公衆衛生にとっても価値がある。」
ICDが発表したデータでは、新型コロナによる入院率や死亡率は、ワクチン未接種者の方が高い。しかし、このデータでは、年齢や先行感染などの重要な要因が考慮されておらず、他の統計では、ワクチン接種者のほうが高い入院率や死亡率を記録した州もある。
会議参加者らは、CDCの提案を支持した。
医療システム会社「トリニティ・ヘルス」のスーパーバイザー、クリスティン・バリント氏は、「私たちは間違いなくこれを支持すると思う。現在、私たちの記録上には、新型コロナワクチン未接種に関して記録している医師がいる」と述べている。
米軍保険局の代表者、ジーン・ヨウダー氏は、一連の変異種それぞれに対して、予防接種を受けたか否かを示すコードをさらに追加することを想定している。
CDCの提案を支持した人たちの所属組織にコメントを求めたが、問い合わせに応じることはなかった。
追加されたコード
昨年4月1日より、3つのコードがICDに追加された。
「未接種」を示すZ28.310、「部分的接種」を表すZ28.311、「その他の予防接種不足の状態」を示すZ28.39だ。前者の2つは、新たなサブカテゴリー「新型コロナに対する予防接種不足の状態」に分類されている。
これらのコードは、ワクチン接種に関連する既存のコードと同じグループに分類されている。そこには、「患者の拒否による予防接種の不実施」というコードが含まれている。
また、パンデミック期間中には、カウンセリングに関連するコード「予防接種の安全性」も導入された。
ネマーズ・AI・デュポン小児病院の臨床文書専門家であるヴァレリア・ビカ氏は、会議のなかで、「どんな理由であれ、ワクチンを拒否したことを示すことができるのはいい考えだと思う」と述べた。
「私たちは、何らかの理由で子供へのワクチン接種を拒否した家族を追跡している。私たちは再教育を行い、ワクチン接種の機会を作ろうと努めてきた」
もともとは世界保健機関(WHO)によって作成されたICDだが、米国当局は独自のシステムを採用している。新型コロナの予防接種コードに関しては、 WHOのICDリストでの使用はない。
米国内で運営されている全ての医療機関、及び「米国における医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令 (HIPAA) 」の対象機関は、米国版のICDを使用する必要がある。CDCによれば、医療従事者がコード化したICDデータによって、公衆衛生当局は疾病関連活動を多く行うことが可能になるという。米国版のICDは、少なくとも年に1回更新される。
コードには他にも目的がある。医療従事者が医療記録を作成することで、将来その患者を担当する施術者もそれを利用できる。また、コードによって請求書の作成も容易になる。
プライバシーに関する懸念
このコードを最初に取り上げたのは、mRNAワクチンのパイオニア、ロバート・マローン博士だ。自身のブログでコードに言及している。パンデミック期間に、ワクチン未接種者が臓器移植などの医療サービスを拒否されたことから、この新たなコードが気になったという。
「この情報は保険会社の手に渡り、保険料の支払いや保険加入の可否を決定するのに使われるだろう」とマローン博士は予想している。
ハーヴェイ・リッシュ博士は、この情報がグループ化された匿名データの分析に使用されうるとしたが、匿名化されたままになるかどうかについては疑問を呈した。
「現時点で、私たちは政府機関をほとんど信用していないし、この情報が個人に汚名を着せる可能性がある。それらのことを踏まえると、情報を個人ではなくグループ化して使用することを信頼する人はいないだろう。政府がこの個人情報をFBIやIRS、あるいは他の機関と共有するのを、どうやったら止められるだろうか。彼らが『そんなことはしない』と言っても、我々は『そんなことは信じられない』と返す。もし彼らがそれをしたら、私たちは何に頼ればいいのか」
「ワクチン接種の有無は重要ではない」
CDCは昨年4月に方針を変更している。新型コロナに関するガイドラインのなかで、「ブレークスルー感染が発生したため、ワクチン接種状況によって人々が異なる扱いを受けるべきではない」と勧告している。ブレークスルー感染とは、ワクチンを接種したにもかかわらず感染することだ。新型コロナワクチンには、感染と伝染に対する予防効果はほとんど、あるいは全くない。
リッシュ博士は「もし、ワクチンの接種状況に関連するコードが導入されるなら、完全接種済みか否かを示すべきだ。完全接種済みの人の中には、ワクチン後遺症を負った人がいるからだ」と指摘している。
イリノイ州の小児科医であるトッド・ポーター博士は、親が子供にいかなる小児ワクチンも接種させなかった場合にのみ、「予防接種の拒否」に該当する既存のコードを使用しているという。
彼は新たなコードの導入に疑問を呈している。「このコードを使った医学的適応を、医療現場において見ることは難しい」と大紀元へのメール取材で語った。
ポーター博士は、新型コロナよりも子供にとって致命的な、インフルエンザのワクチン接種拒否を示すコードがないことについて指摘した。
さらに彼は、「これらのコードの使用は、自然免疫の貢献も無視している。研究証拠は、自然免疫がワクチンによる免疫よりも強固であることを示している」と述べる。感染と伝染に対する予防効果がなく、小児の重症化に対する予防効果を示すデータもないことから、「ワクチン接種の有無は重要ではない」との見方を示した。
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