ワクチンをめぐって パンデミック条約で各国の医療事情や文化の違いが無視されていいのか

日本を襲うコロナワクチン薬害とがん増加… 「世界一律のワクチン推進」に京大福島教授が異議(上)

2024/05/02 更新: 2024/05/02

5月末の国連総会でパンデミック条約および国際保健規則(IHR)改訂の採択が迫るなか、来るべきパンデミックにおいてWHOの権限が強化されるのではないかといった懸念の声が高まっている。

これらの準備が推し進められる背景には、新型コロナウイルス感染症のような人類全体に影響を及ぼす感染症に関して、各国がバラバラに対応するのではなく、WHOの指揮のもと国際社会が一致して対策を講じるべきという前提がある。

一方、日本の薬剤疫学分野の第一人者である京都大学名誉教授の福島雅典氏は、世界各国で医療事情や文化が違うのに地球規模で一律の対応策を講じるのは間違いだと指摘している。WHOが指揮すべきは、各国で接種が進んだ遺伝子ワクチンによるアウトカム(outcome:人や集団の健康状態における変化)の包括的な調査だという。

「安全性が十分に確認されていないワクチン接種がまた強要されるのではないか」「流れに押されて世の中が全体主義化するのではないか」といった国民の不安の声が高まるなか、パンデミック条約および国際保健規則(IHR)改訂をめぐる国際機関内での協議も難航している。

外務省が答弁「国際社会が一致して対応する必要」

先月25日、参議院総務委員会で、NHK党の浜田聡参議院議員が「パンデミック条約」に関する質疑を行った。

ネット上には、「WHOに強制的な権限を付与することになる」「各国の憲法や基本的人権は関係なくなる」「WHOが提案する医療や治療薬、ワクチンなどを使うよう義務づけられ、違反者への罰則も可能になる」といった「過激かつ極端に思える言説」が出回っているとし、それらの情報の真偽について質問した。

外務省は、条約交渉の中で浜田議員が指摘したような内容に関する「議論は行われていない」と回答した一方で、「新型コロナウイルス感染症のような人類への影響を及ぼす感染症に関しては、国際社会が一致して対応する必要がある」との政府見解を強調した。

「日本の国益を確保する上でも、パンデミックの予防、備えおよび対応を強化するため、国際的な枠組みを強化することが重要であるという立場でございます」

WHO主導のコロナワクチン推進は「根本的に間違い」

先月19日、イタリアの医師らがコロナ禍において設立した科学委員会「Commissione Medico Scientifica indipendente (CMSi) 」によるセミナーが開催され、パンデミック条約やIHR改訂に懸念を有する各国の専門家らがコメントを寄せた。

パンデミック条約の最新草案には、ワクチン接種を各国に迅速に行き渡らせるための体制構築に関する内容が盛り込まれている。セミナーにビデオ出演した京都大学名誉教授の福島雅典氏は、「医療事情も習慣も制度も各国によって違うのに、WHOが指揮を執って一律にワクチン接種を進めるというのは根本的に間違っています」と述べた。

「医療は人々の生活習慣、その国の医療制度や法律制度、そして文化によって違います。だから一律に地球規模でワクチンを推し進めるというのはおかしいと思います。各国政府はWHOに判断を委ねてはいけないというのが私の基本的な姿勢です」

2024年4月19日、イタリアの医師らが設立した科学委員会「Commissione Medico Scientifica indipendente (CMSi) 」によるセミナーにビデオ出演した京都大学名誉教授の福島雅典氏(CMSiのYouTubeよりスクリーンショット)

「ロックダウンしようが、様々な制限をかけようが、それは各国の自主的な判断でやればいいです。一番重要なのは人々の健康をどのようにキープすればいいかということです。私が学生の時はまだ日本で結核が蔓延していましたが、その時に教わったのは待機、安静、そして栄養ですよ。今でもそれが真理です」

「腫瘍内科(Medical Oncology)」という名称を日本に定着させた薬剤疫学分野の第一人者である福島氏だが、新型コロナ対応のmRNAワクチンによる健康被害、特にそれまで健康だった人の突然死といった事例は重大問題であるとし、「これは殺人ですよ。マスコミも新聞も取り上げないのは歪んでいます」と厳粛に指摘した。「死亡者は政府に届けられている数だけで約2,130名ということですが、これはおそらく氷山の一角です」

国を挙げた「がん撲滅」がコロナワクチンで水の泡に

セミナー開催者の一人であるPanagis Polykretis博士は、先月8日にCureus誌に掲載された研究について取り上げた。福島氏をはじめとする日本の研究者らによる同論文では、日本で2022年に新型コロナワクチンの3回目接種が進められた後に特定の種類のがんによる死亡率が増加した現象について分析した。

がんは日本における主な死因で、死亡者全体の4分の1を占める。「がん撲滅というのは日本国民の悲願であり、がん対策基本法まで作って努力してきましたが、がん死亡の減少傾向が2022年に水の泡になったことがはっきりしました」と福島氏は述べた。

「日本は過去に抗がん剤の分野でも重大な薬害を起こしているんです。そういう歴史を繰り返さないために全例調査、つまり新しい作用機構の薬が市場に出た時に全症例を調査するという日本独自の制度も作りました。その教訓があるにもかかわらず、今回に限って見切り発車的にこのワクチン接種を大規模に進め、日本独自の制度も一切適用しなかったというのは、接種を勧めたアドバイザーや政府に重大な責任があると思っています」

大紀元報道記者。東京を拠点に活動。