中国・上海電力の日本法人は山口県岩国市で大規模な太陽光発電事業を進めている。市によれば発電設備の土木工事は概ね完了し、発電所の稼働開始は6月から7月の見通し。
石本崇市議会議員の質問を受けて、市が事業の進捗状況について答えた。市による事業者からの聞き取りでは「2月末時点で土木工事は概ね完了しており、あとは植栽工事やフェンス工事が残る」状況という。
ソーラーパネル設置は完了しており、変電設備等の工事は約85%、電気設備全体の進捗は約90%とした。事業者は現在、電力ケーブルの絶縁耐力試験や電気機器の試験を行っているという。
市は4月中旬、メガソーラー計画地の林地開発許可権を持つ山口県へ工事完了届を提出し「開発行為の内容に適合しているかの確認」を受ける予定。なお稼働後の電気設備の保守点検、設備の維持管理業務は、大規模太陽光発電施設の管理実績のある管理会社に業務委託すると事業者から聞いているとした。
市は稼働間近となるなか、開発地域の近隣住民からは「事業に起因する災害の発生や開発区域下流の水質の変化、農業用水の不足など不安の声が寄せられている」ともあわせて答えた。
上海電力の親会社は国有発電大手の国家電力投資集団(SPIC)。2021年8月、上海電力日本がファンド運営アールエスアセットマネジメントの保有する岩国のメガソーラー事業会社の全株式を取得することを発表した。
問題山積
メガソーラーには地域の水質汚染や自然災害への脆弱さ、発電効率などの面で疑問点が並ぶ。これに加えて原材料のポリシコンの生産が強制労働で取り沙汰される新疆ウイグル自治区に集中しているため、輸入側は中国共産党の人権侵害に加担しかねないとの指摘もある。
岩国市山間部に設置される24万枚もの太陽光パネルの調達先も、強制労働に関わるとして米国から取引制限されているトリナ・ソーラー(天合光能、江蘇省常州市)であることも判明している。
性急な太陽光パネル事業の推進に警鐘を鳴らす、全国再エネ問題連絡会の山口雅之共同代表は先月、川崎市でセミナーを開催。「再生可能エネルギーに内在する様々な問題が全てスルーされ、目標ありきで進んでいる。全国各地の森林が大規模に破壊され、土砂災害のリスクに怯える住民が、北海道から沖縄まで全国で増えている」と語った。
岩国の事業には、極東最大の米海兵隊岩国基地に程なく近いことから、中国企業による土地利用が日本の安全保障への影響を不安視する声もある。
中国共産党の土地買収に警戒感を高める米国では、ノースダコタ州グランドフォークス空軍基地から約20キロ離れた土地に計画されていた中国食品会社のトウモロコシ工場建設計画を阻止した。同基地には、米軍通信網の要とされる宇宙ネットワークセンターがある。
2月末には、海上自衛隊と米海軍が初めて広島湾で共同訓練をした。中国新聞2月27日付によれば、南西諸島防衛においても戦闘機を配備する米軍岩国基地の役割が高まる可能性があるという。
2月1日、防衛施設や国境など安全保障上重要な土地の利用を規制する「重要土地等調査法」の運用が始まるも、重要施設周辺約1キロを「注視区域」としており、米軍基地から20キロ離れた岩国メガソーラーは調査対象外となっている。
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