米国では鎮痛剤フェンタニル中毒による死亡者の急増が大きな社会問題となっている。ジム・バンクス下院議員は24日、フェンタニルの供給源となる中国の責任を追及し、党幹部に制裁を課す法案を発表した。
バンクス氏は「共産主義中国からのフェンタニルによって、10万人以上の米国人が殺された。習近平主席と中国共産党は責任を負わなければならない」と述べた。
「中国共産党フェンタニル阻止法案(Stop CCP Fentanyl Act)」は米国の薬物危機を助長しているとして、習近平氏と党幹部に制裁を課す。国際緊急経済力法に基づき、米国内または米国市民との金融取引に関与することを禁止するほか、ビザ発給が停止される。
その他、フェンタニルによる犠牲者の親族が中国共産党に対して損害賠償を求めることを可能にする内容が盛り込まれている。
制裁措置は少なくとも18カ月維持され、米国へのフェンタニル前駆体の流入が18カ月前と比較して98%減少すれば、大統領は制裁を解除することが可能になる。
税関・国境警備局によれば、2022年に押収したフェンタニルは1万4700ポンド(約6700キロ)に上る。2021年の1万1200ポンド、2020年の4800ポンドと比較しても大幅な増加傾向にある。
フェンタニルの危険性
がん患者に用いる鎮痛剤として1959年に開発されたフェンタニルは、米国で合法的に製造・処方されている。しかし、中国からメキシコ経由で米国に密輸される違法フェンタニルの過剰摂取により死者が後を絶たない。
麻薬取締局によると、フェンタニルはモルヒネの約100倍、ヘロインの約50倍強力と言われており、米国でこれまでに最も多くの死者を出している違法薬物だ。致死量は、鉛筆の先に収まるわずか2ミリグラムとされる。
米下院の「米国と中国共産党の戦略的競争に関する特別委員会」が2月28日に開いた初公聴会でもフェンタニルの脅威が取り上げられた。昨年には、全米50州のうち18州の検事総長が、違法なフェンタニルを大量破壊兵器として指定するよう要請する書簡をバイデン大統領に送った。
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