先月28日、ケニアの首都ナイロビで中国資本による「不当廉売」に抗議する大規模デモが発生した。ロイターなどが報じた。
この日、地元の商業者を中心とする約1000人が集まり、ナイロビの商業地区にある中国資本の小売チェーン店「China Square」が、市場価格を著しく下回る廉価で商品を販売したことに抗議した。
「不当な安売り」で地元市場を独占
抗議者の掲げるプラカードには「Stop Chinese invasion(中国の侵略をストップする)」の文字が見える。同じプラカードに「Businesses」とあるので、中国資本の理不尽なビジネスが地元商人の営業を圧迫したことが直接の原因になったとみられる。
「不当廉売」とは、不当に低い価格で商品を販売することにより、市場を独占して他の事業者の商業活動を困難にする不公正な取引方法である。日本では独占禁止法によって禁止されている。
この中国資本の店では、中国などから輸入したカーテンなどの日用品を、地元業者が販売する価格より平均して50%近くも安く売っていたという。
デモに参加した地元商人によると、当該の中国企業は製造から卸売り、さらに小売りまでのサプライチェーンの全てを独占している。この地域のために「数百人」の雇用機会を作り出したものの、ケニア全体では「数百万人」を失業させたという。
「チャイナは出て行け!」などと叫ぶ抗議の群衆はさらにふくらみ、大規模デモとなった。抗議現場には「we are fed up by self proclaimed leaders(自称指導者にはうんざりだ)」の横断幕もある。
これは、中国の一企業による「独占的な安売り」の問題だけではなく、ケニアに対して「指導的」にふるまう中国の横暴に、ケニア国民の怒りが爆発したともいえる。
そうした背景には、中国主導で進められてきた「一帯一路」が相手国に落とした暗い影があるとみられる。
「一帯一路」は恐るべき債務の罠
ケニアでの反中運動をネット上に投稿した中国民主化運動組織「中国民主党」の主席・謝万軍氏のSNSに寄せられたコメントのなかには、このような指摘もあった。
「中国がケニアでばら撒いた大金は、中国企業や腐敗したケニアの役人を肥やしただけだ。その恩恵が少しでも地元民に届いていれば、このような大規模な反中運動が起きることはなかった」
確かに、中国が進める広域経済圏「一帯一路」は、ホスト国に有益であるどころか、アジアやアフリカの多くの途上国を「恐るべき債務の罠」に陥れてきた。
中国は、インフラ整備や融資をちらつかせて「一帯一路」への参加を誘いながら、始めから意図してホスト国に「債務」という巨大な借金を作らせる。債務でがんじがらめにしてから、一国をまるごと奪うのである。
輸出したのは「中共の不正、腐敗」だけ
しかし実際のところ、インフラ建設などの大型プロジェクトは中国企業が主導し、従事する労働者も多くが中国人である。
現地での雇用創出や経済成長を促す効果は非常に限られている一方、中国企業による人権侵害や環境破壊は数多く報告されている。
特に、ケニアはこの「債務の罠」にはまっているとされている。そのため同国では、過去にもたびたび中国資本に対する民衆の抗議デモが起きている。
ケニアでは2016年にも、現地に十分な雇用を生んでいないとして中国企業に対する抗議デモが起きた。抗議活動の末、約200人の現地の若者が鉄道建設を行っていた中国企業を襲撃する事態となった。
今回、ナイロビで勃発した反中運動は、中国がその「一帯一路」を通じてホスト国に輸出したものが、不正や腐敗といった良からぬ「中国共産党の文化」であったことを浮き彫りにしている。
ケニアばかりでなく、中共の「一帯一路」でホスト国の国民が幸せになることはない。
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