「大きくなったら何がしたい?」日本と米国に矛先を向ける中共の憎悪教育

2023/04/17 更新: 2023/04/18

中国国内で発信されている好戦的な言動を英語や日本語などに翻訳して伝える有志組織・大翻訳運動は13日、将来の夢を問われ答える中国の子供の動画を字幕付きで投稿した。残忍さを示すその答えに、専門家は「幼い頃から共産党の歴史シナリオのなかにいる」とその憎悪教育問題を指摘した。

中国の小学校の教室の中で撮影されたと思われるこの動画は、男の子が撮影者の質問に答えている。「一番好きな国は?」との問いに「中国」と答えた子供は、次に一番嫌いな国を問われると米国と日本と答えた。

「なぜそこまで嫌いなのか」と聞かれると、子供は「歴史を知っているから。『抗美援朝』も『南京大虐殺』も知っている」と述べた。

抗美援朝とは朝鮮戦争当時の中国共産党のスローガンで、「米国に抵抗して北朝鮮を助ける」という意味。旧日本軍の侵攻をめぐる南京事件の歴史も、今日、党が日本に対する攻勢を正当化する際に使用されるプロパガンダだ。

撮影者はさらに「では大きくなったら何をしたい?」と尋ねると、男の子は、米国人や日本人の生命を傷つけるような行動をとるといった旨の発言をした。

同動画には多くの意見が書き込まれた。「本来ならば一番無垢な子供時代であるはずなのに、なぜこうなったのか」と共産党のイデオロギー教育を指摘する声が大半だ。なかには「これを見て、もう中国で子供を産むのやめようと決めた」と書き残す人もいた。

愛国教育」が生み出した産物

中国時事評論家の唐浩氏は以下のように指摘する。

戦争がもたらす悲劇を増幅させて歴史の傷を繰り返し引き裂くことで、国民を幼い頃から党の歴史シナリオのなかに浸からせている。民族主義を扇動することは、中国共産党が人民に対する思想改造および行動を操作するのに最も便利な手法だ。

悲痛な歴史から抜け出せず、心に大きな非理性的な憎悪が蓄積された人民は戦争がもたらした過ちを理性的かつ冷静に思考することができない。そのような心理状態の人は党による民族主義的なプロパガンダに操られやすい。

中国人は「外国を憎むこと」や「党の敵を憎むこと」が至上の愛国心だと信じ込まされており、中国共産党による極端なまでの「憎悪式」の愛国教育が中国や中国人と外国社会の平和的交流を妨げている。

大翻訳運動

大翻訳運動とは22年春、ロシアによるウクライナ戦争開始以降に中国語SNSに広がる戦争犠牲者に対するヘイトスピーチや侮辱的な言動を撮影した動画を翻訳して、ツイッターやフェイスブックなど大手SNSに投稿する有志者による活動だ。

最近では、日本に留学する広島在住の中国人学生が原爆の影響を揶揄する動画や、北京の紫金城前の広場で砲台を囲み「小鬼子をぶっ飛ばせ」といった発言をする小学生の集団などの動画を日本語字幕付きであげている。

先日、岸田文雄首相が和歌山県市内で爆発物を投げ込まれた事件についても、中国国内のSNSで注目されるコメント「(首相が無事であったことに)残念だ」を翻訳して取り上げた。

大翻訳運動に参加するメンバーは以前独ドイチェベレ(DW)に対して、中国人の心情は「中国共産党の対外宣伝で描かれるような『温かくて優しい』ものではなく、高飛車、傲慢、残酷、好戦的である」ことを外部向けに周知させていると述べた。

さらに在外華人向けにも精神的な目覚めを呼びかけている。「負の感情から脱却し、自らの無知を恥じて、真に文明社会と一体化すること」を啓発するのが活動メンバーの期待だと語った。

翻訳チームのメンバーはそれぞれやりがいは感じているものの、翻訳の過程で目にする性差別や人種差別の発言に精神的にも疲弊しているという。

「気分は最悪で、目にした動画や写真の多くに何度も泣かされた。中国語を知らなければ内容を知ることもこの活動をすることもなかったのに、とさえ思った」と元メンバーは語った。現在は活動を離れ、精神衛生上、翻訳や中国ソーシャルメディアの閲覧をやめているとDWに明らかにした。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。
李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
関連特集: 社会問題