中国の「反スパイ法」改正案が、7月1日より施行される。これにより、中国の警察当局がスパイ行為の摘発範囲を拡大することが予想されている。
このため、通常の商業活動であっても、海外企業が中国国内で情報を得ようとすることが一層困難になるのは必至だ。対中貿易や中国で事業をおこなう業者は「チャイナリスク」の再評価を迫られるとともに、在留邦人にも不安が広がっている。
海外のキャンパス内にもある「中共の監視の目」
実際に、夏休みなどで中国に一時帰国した中国人留学生が、海外での言動を問題視されて地元警察に拘束されるケースが起きている。そのため、あと2カ月ほどで夏休みを迎える中国や香港出身の留学生の間では、「帰国したら拘束されるのではないか」「二度と出国できないかもしれない」という不安が広がっている。
日本経済新聞社の英字メディア「Nikkei Asia」7日付は、帰国を恐れる中国人留学生の声を取り上げた。
米国の大学で学ぶ中国人留学生の李さんは「Nikkei Asia」に対し、「帰国する前に、携帯電話に残る写真や動画、通信ソフトのチャット記録を全て削除する」と明かした。李さんのように、留学生の間では「いかなる記録も残さない」ことがコンセンサスになっているようだ。
李さんによると、米国の多くの大学内には中国人留学生からなる「組織」があり、その組織を通じて「何か疑わしいことがあれば、個人情報が中国大使館に密告される」と噂されているという。この噂を本当だと信じて疑わない李さんは「周囲の同胞さえ警戒しなければならない」と、苦しい胸の内を訴えた。
独自の「匿名サイト」で留学生を守る大学も
李さんのように、海外に留学中の行動が、自身や本国にいる家族に危険をもたらすのではないかと恐れる中国や香港出身の留学生は、実に多い。
中国の国外でどれほど自由な空気が吸えても、彼らの心は、子供のころから植え付けられた「党の支配」を逃れられないでいるのだ。
一方、独自の措置によって、民主派学生の権利を守ろうとする大学もある。
例えば、オーストラリアのニューサウスウェールズ州にキャンパスを構える名門のニューサウスウェールズ大学は、外国政府が絡む学生への嫌がらせなどを匿名で通報できるサイトを立ち上げて、対抗姿勢を示している。
こうした独自の「匿名サイト」が学内に設けられることは、そうした海外学生への嫌がらせが実際にあるということを如実に示していると言えるだろう。
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