日本の垂秀夫・駐中国大使は21日、中国の孫衛東・外交部副部長がG7首脳声明に申し入れを行なったことに「懸念事項に言及しないことを求めるのであれば、まずは中国側が前向きな対応を行うべき」だと反論した。台湾問題や人権、経済的威圧等について、「中国が行動を改めない限り」今後も言及していくと強調した。
G7広島サミットの共同声明では中国について単独の項目を設けた。東シナ海や南シナ海、台湾海峡における力による現状変更を否定し、人権問題に懸念を示し、経済的威圧や悪意ある貿易慣行等に対抗すると表明した。
これらの項目について、垂氏は「中国が行動を改めない限り、これまで同様にG7として共通の懸念事項に言及するのは当然のことであり、将来も変わらないであろう」と表明。さらに「懸念事項に言及しないことを求めるのであれば、まずは中国側が前向きな対応を行うべき」だと述べた。
さらに、「中国は、日中民間交流は重要であると常々述べているものの」、「その時々の日中関係の雰囲気が悪くなればすぐに民間交流や文化交流の実施を妨げている」と非難した。
中国外交部は21日、日本がG7サミットで欧米諸国とともに「中国を中傷した」と主張、日本の行動は有害であるとして「強い不満と断固たる反対」を示した。
シンクタンク・日本戦略研究フォーラム政策提言委員の平井宏治氏は「在中日本大使の正論を強く支持します」と述べた。垂氏の言葉を引用し「これがわが国が堂々と言うべきこと」だと付け加えた。
安全保障学専門家の武内和人氏は、G7は、中国を絶対的に敵視しないスタンスを見せることで安心を供与しつつ、南シナ海や東シナ海、台湾海峡の安定に言及することで抑止を狙ったと指摘。「中国がロシアのように現状打破の立場で動いた場合について話し合いができたのではないか」と推察し、G7間で戦略調整ができたことを示唆しているとした。
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