東京の中国大使館前で単独抗議する中国人女性 その手には「獄中で死んだ母の写真」

2023/05/24 更新: 2023/05/26

東京都心の六本木ヒルズに近い元麻布に、在日本中国大使館はある。

その中国大使館の正門前で21日、中国出身の留学生・李寧さんは、中国の獄中で死亡した母親の遺体写真を掲げながら、中国共産党による非道を糾弾するため抗議の声を上げた。

「中共大使館」に立ち向かう女性

ただ一人、顔も実名も出して、中国大使館の前で堂々と抗議する中国人女性がいた。

それは、もはや恐れるものは何もない、勇気と信念の姿だった。中共のいかなる暴力も、卑劣な脅迫も、彼女の前では何の意味もない。中共は、中共を恐れない人間を最も恐れるのである。

李寧さんは、この場所で抗議するにあたり「私の主張に理解を示し(抗議活動を)許可してくれた日本の警察に、心から感謝します」と述べている。

李寧さんの手には、獄中で亡くなった母親の傷だらけの写真があった。また、母親への虐待を指示し、死亡後には「自殺」を偽装するよう命じた刑務所の責任者である女性刑務官の顔写真も握られていた。

李さんは「(私の)母の死は、中国政府および公安、裁判所などの直接的な関与によるものだ」として、関係する全ての中国当局に抗議の意を示した。

さらに彼女は、国家からの賠償および中国官製メディアを通じた「公開謝罪」を求めるとともに、6月1日に山東省煙台市牟平区の裁判所で開かれる予定の裁判の全過程を生中継するよう要求している。

山東省の陳情者の娘「単騎千里を走る」

米政府系放送局のラジオ・フリー・アジア(RFA)22日付は、この李寧さんの件を取り上げた。

李寧さんの母親である李淑蓮さんは2009年、山東省の地元当局との間で家屋をめぐる紛争が生じたため、北京へ陳情しに行った。

中国において、このような中央への陳情は、全く合法的な民衆の権利である。しかし地元政府としては、地方の問題が中央へ知られることはどうしても避けたい。そこで、地方から北京へ要員を派遣して、力づくで陳情を阻止しようとする。

李淑蓮さんも、そのような経緯のなかで地元へ連れ戻された後、同年10月、地元当局によって拘束される。その間、獄中で死亡した。言うまでもないが、李淑蓮さんが何かの罪を犯して服役していたわけではない。

地元当局は、李淑蓮さんの死因について「(本人が)首つり自殺した」と主張した。しかし、その遺体には電気ショックや殴打によるとみられる傷痕が多数残っていたことなどから、遺族は当局の説明を信じていない。

「母は、事故死や自死したのではない。生きながら殴り殺されたのです」と李寧さんは主張する。以来、14年間にわたり、娘である李寧さんの戦いが続くことになる。

私の戦いは「全ての被害者のため」

2018年、李淑蓮さん死亡の件に関わった当局者および警備員ら6人は「不法に拘束した罪」により有罪が確定し、4年半から8年の懲役刑が言い渡された。

ところがその際、事件に関わった当局者は「死因が変更されたこと」を認めたにもかかわらず、判決書には依然として「自殺」と書かれていたという。

李寧さんは、今回の事件に関与した者たちの量刑があまりにも軽く、また、母親の死は「中国政府および公安、裁判所などの直接的な関与によるものだ」と主張。このまま終わらせようとする中国の司法をはじめとする「巨悪」に対して、さらなる戦いを挑んでいく。

現在、李寧さんは「国家からの賠償」および「人民日報」やCCTV(中国中央テレビ)をはじめとする官製メディアに「公開謝罪」を要求するほか、6月1日に山東省煙台市牟平区の裁判所で開かれる予定の同案件の裁判を、全て生中継するよう求めている。

李さんはこれまで10年間、母親の理不尽な死をめぐる訴訟に身を投じ、北京と山東省を行き来する交通費のほか、弁護士費用などで多くのお金をついやしてきた。

彼女は「今回の賠償要求を通じて、中国当局から不当な扱いを受けている他の人たちのためにも、良い前例を作りたい」とRFAに語っている。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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