中国 声を上げた代償は「精神病院」と刑務所

声を上げ、人を助けただけ 「都合の悪い市民」は投獄=中国

2026/08/13 更新: 2026/08/13

困っている人を助ける。納得できないことに「おかしい」と声を上げる。SNSで情報を共有する。

日本なら、それだけで刑務所に入れられるなど、まずありえない。しかし中国では、権力にとって「都合の悪い市民」とみなされ、何度も自由を奪われた女性がいる。

その女性が、四川省雅安(があん)市の陳明燕(ちん・めいえん、49歳)さんである。陳さんは8月10日、4年半の服役を終え、ようやく出所した。

陳さんと当局との長い闘いは、子どもの養育費をめぐる問題から始まった。裁判所の判断に納得できず陳情を続けると、警察に何度も拘束された。

さらに警察は陳さんに精神鑑定を強行し、本人の意思に反して精神科病院へ送り、約7カ月にわたって収容したという。

中国では、精神科病院が陳情者や人権活動家など、当局にとって厄介な人物を黙らせるために使われることがあり、本人の意思に反する投薬や隔離も報告されている。

それでも陳さんは黙らなかった。自分だけでなく、同じように当局へ訴える人々を助けるようになった。

拘置所に収容された陳情者や権利擁護に取り組む市民に金銭や生活物資を差し入れ、面会に訪れた家族を支え、必要に応じて各地の人権派弁護士に支援を求めた。

2015年には、SNSで「江沢民を提訴し、法輪功への迫害をやめさせよう」とする画像を共有したことをめぐり逮捕された。

陳さんは後に本紙の取材に対し、自身の投獄は、それまで続けてきた陳情や人権活動に対する当局の報復だったと考えていると語った。自分は法輪功学習者ではなく、学習者の知人すらいなかったにもかかわらず、当局から法輪功学習者と認定され、2017年に懲役4年を言い渡されたという。

2020年4月、陳さんは1度目の服役を終えて出所した。当時、本紙の取材に、獄中では長期間にわたって過酷な労働を強いられ、虐待も受けたと明かしている。その影響で健康を害し、出所後は子どもたちとの関係も疎遠になり、多額の借金を抱え、住む家さえない状態だったという。

それでも陳さんは、弱い立場の人々への支援をやめなかった。その活動を理由に2022年、再び当局に拘束された。

その後、「尋釁滋事罪(騒ぎを起こして社会秩序を乱したとする罪)」で懲役4年6カ月を言い渡された。この罪は適用範囲が広く、中国では陳情者や人権活動家の取り締まりにも使われている。

2026年8月10日、陳さんは2度目の刑期を終え、出所した。

陳情する。SNSで当局が嫌う情報を広める。そして、同じように声を上げた人を助ける。

人を傷つけたり、金をだまし取ったりしたわけではない。それでも中国では、権力にとって「都合の悪い市民」になれば、精神科病院に押し込められ、刑務所に送られることさえある。

十数年にわたる陳さんの歩みは、その現実の重さを物語っている。

李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!
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