新任の駐米中国大使である謝鋒氏は、在米華僑や中国人留学生向けの公開書簡を発表し、中国共産党に奉仕するよう呼びかけた。専門家は、在米中国人は誰しもが党の目的を達成するため「工作員」にされるリスクがあると指摘している。
23日に着任したばかりの謝鋒氏は、英語と中国語で書簡を発表した。「米国の同胞たちへ」と題した在米華人向けの手紙では「血は水よりも濃い」と記し、民族意識や愛国心を喚起した。このほか大使館への訪問を誘った。
留学生向けの別の手紙には「愛国心を持って祖国に奉仕し、団結して大使館と協力する」よう要求した。さらに「米国の友人には中国の物語を伝え、米中関係の改善を助ける」ように促した。
「中国の物語を伝える」は共産党政権と政策を好意的に描くシナリオを拡散させる対外プロパガンダのひとつ。新疆ウイグル自治区の訓練キャンプ、法輪功弾圧、一帯一路など党策に関する批判的意見を覆い隠し、肯定的意見を多数発信する。
この手紙は、米捜査局が中国共産党に協力した在米中国人を逮捕、起訴が相次ぐなか発出された。
ボストン地域の華僑リーダーを務めた男は5月初旬、中国共産党に監視対象者リストを渡したとして逮捕された。
このほか、カリフォルニア在住の中国系の男2人が、法輪功迫害に加担したとして連邦検察に起訴された。米税務局職員(覆面捜査官)に賄賂を渡し法輪功組織の免税権利停止を試みたという。
この数年で、米国を含む海外で先端技術を学び中国本土へ持ち帰る「千人計画」に参加した複数の中国系米国人学者が、スパイ行為や知的財産窃盗、不法な技術移転によって逮捕されている。
利用される在外中国人
中国人はどの国に住んでいようと、中国共産党の目的を達成するための「工作員」にされるリスクを抱えている。在米中国評論家のゴードン・チャン氏は、党は民族意識に基づく団結を訴えると指摘する。
その例に「ルーツ探しの旅(尋根之旅)」を挙げた。中国外交トップを務めた国務委員の楊潔篪(よう・けつち)は2013年に広東省で行った旅行のなかで「我々は同じ先祖、歴史、文化を共有し、全員が中華民族の子であり、龍の子孫だ」と語った。
こうした「ルーツ探しの旅」は中国伝統の歴史ではなく、抗日戦争の舞台や農村改革など共産主義の歴史を辿る旅となっている。国務院僑務事務局などが主催し北米や台湾などの在外中国人が参加する。
さらに近年、中国共産党は「在外中国人に対して積極的に『祖国』のために犯罪を犯すように迫るようになっている」とチャン氏は付け加えた。
実際、中国の公安当局が出先機関を諸外国に設け、反体制派中国人らを不当に「連行」しているとの実態が明らかになった。
スペイン拠点の人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」によると、強制的な帰国作戦によって2014年~22年10月に1万人以上が中国に戻ったという。エポックタイムズの取材に応じた在日中国人は、都内で中国人2人組から脅しを受けて帰国を強要されたり当局のスパイ活動に加担するよう要求されたと述べた。
当事国の了解を得ない警察活動は主権侵害に当たるとして、米国や欧州では閉鎖や摘発を進めている。
チャン氏は在外中国人に向け、中国共産党による自由を毀損する「破壊活動」に協力しないよう呼びかけている。加担すれば、彼らは自身の「家」である米国を破壊しかねないと警告を発した。
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