日本政府は負の「伝統芸能」を断ち切り、日本をデフレから脱却させることができるのか。そして、社会を変えるために国民一人ひとりができることとは何か。気鋭のエコノミスト・森永康平氏が語る。<第三弾>
ーー4〜6月期のGDP速報値は年率換算で6.0%増となった。日本はデフレから脱却できるのか。
日本はようやくデフレを脱却できる段階に来ており、しっかりとした政策を打ち出せば日本経済は変わっていく。しかし、岸田政権は増税志向だ。景気が回復し切る前に景気の腰を折るのは、もはや日本政府の伝統芸能だ。
中国では将来に希望を持てない若者の「寝そべり」が問題となっているが、日本の若者にも通じるところがあるのではないか。オンラインの娯楽が普及し、部屋で寝っ転がってスマートフォンを見るだけの生活でもいいと思っている人たちに対して、「もっとアグレッシブに生きていこうぜ」と思わせられるほどの何かを提示できるか否かがポイントだ。
ーー今後の日本経済の見通しについてはいかがか。
日本はようやく長いデフレ経済から脱却しつつある。このタイミングで政府や中央銀行が余計なことさせしなければ、そして来年も賃金が上がれば、日本経済が上向く可能性は相当高くなるのではないかという手応えはある。
ただ、このタイミングで増税をしたり、金融緩和をやめたり、得てしてそのようなことを行ってきたのが今までの日本政府と中央銀行なので、まだ完全に安心することはできない。
ーー景気が上向けば税収も増えるのではないか。
その通りだ。経済が成長すれば自ずと税収は伸びるため、税率を引き上げる必要などない。しかし考え方を変えられない人たちが多いため、その状況が変わらない限りこの国はどうにもならない。
日本は腐っても民主主義国家であり、有権者が政治家を選べる国だから、国民が賢くなる必要がある。政治家がダメだなんだと言っているが、結局のところ選んでいるのは国民だ。メディアも結局はビジネスなので、だれも見なかったら仕事にならない。それでも現状のメディアが続いているのは、結局メディアを見ている人がいるからだ。国民が変わらなければ政治家もメディアも変わるわけがない。
ーー日本メディアは中国の暗い面を報道していないという指摘も多い。
程度の問題もあると思うが、一般的に日本のメディアは左派に近いと言われており、親中的な報道が多い。そして日本を下げる報道を行なっている。昔から日本のメディアは中国や韓国といった日本周辺のアジア諸国はよく言うのに、日本はダメだ、という論調だ。逆に既存メディアとは異なる意見を表明すれば、「お前は右翼だ」のような言論が飛んでくる。
日本メディアもポリティカルコレクトネスの影響を強く受けている。例えば、中国はこういうところが危ない、というリスクを語ったとしても、「それは外国人に対して差別的な発言だ」「レイシストだ」のような話をしてくる人もいる。中国人がダメだなんて一言も言っていない。中国という国家の運営においてはこういうリスクがあるというだけの話だ。日本のメディアは非常にセンシティブになっており、国民がそのような事柄にばかり目を向けていると、誤った判断をしてしまう。
ーー中国では不動産大手が相次いで債務問題に陥っている。日本の年金機構も中国に投資しているが、影響はあるのか。
リーマンショックの再来という意見も多いが、私はそう思わない。中国国内は大変だと思うが、リーマンショックのように世界中の金融機関が潰れるような話にはならないだろう。
日本の対中国投資は、対外投資の全体と比較すれば割合がそれほど大きいわけではないので、日本の金融機関が破綻してしまうことはあまり可能性が高くないと思う。しかし貿易相手国として考えた場合、中国は大きな割合を占めているので、中国国内の景気が大きく落ち込んでしまうと、日本の貿易には大きな打撃はあると思う。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。