【プレミアム報道】新型コロナワクチンと心筋炎:米当局はいかに危険信号を隠蔽したのか(1)

2023/09/27 更新: 2023/11/27

今や、新型コロナワクチンが心臓の炎症を引き起こすことは米当局が認めている

しかし、2021年初頭にイスラエルで新型コロナワクチン接種後の健康な若者に多数の症例が発生した際には、米当局はイスラエル政府から警告を受けていたにもかかわらず、国民に早急な注意喚起を行わず、国内で現れていた安全性シグナルも検出できていなかった。エポックタイムズの調査で判明している。

また、心臓の炎症、つまり心筋炎による死亡例が報告され、それがワクチン接種の副作用である可能性が高いとされた後も、米当局は実質的に全国民に接種を推奨し続けた。

その結果、数百万もの若者がワクチンを接種することになり、多く人が苦しみを味わった。

エイデン・エカナヤケ君(14歳)もその一人だった。彼は2021年5月にファイザー・ビオンテック製のワクチンを接種し、その翌月に2回目の接種を受けた。

2日後、エイデン君は前十字靭帯断裂に匹敵する痛みで夜中に起こされた。すぐ母親に病院に連れて行かれ、数日間の治療を受けたが、退院後も4カ月以上にわたって運動が制限された。

それまでエイデン君は、ワクチン接種を推奨した当局、つまり米国疾病予防管理センター(CDC)を信頼していたが、今はもう違うという。

「彼らを憎んでいる。邪悪だと思う」とエポックタイムズに語った。

透明性の欠如

2021年2月28日、CDCは、ファイザー製の新型コロナワクチン接種後に心筋炎を発症する患者が多数発生したことについて、イスラエル政府から警告を受けていた。エポックタイムズが入手したCDCの内部メールによって明らかになった。

CDCはこの警告を高い重要度に指定し、国内データの見直しを始めた。2021年3月9日付けの米政府の覚書によると、この見直しにより米国内で27件の報告例が見つかった。発症率は低く、覚書では「データの欠落や不完全さにより、因果関係の評価は困難」とされた。また、米国食品医薬品局(FDA)も「因果関係について最終的な判断は下していない」と述べている。

2020年12月20日、イスラエルのテルアビブにあるテルアビブ・ソウラスキー医療センターで新型コロナワクチンを投与される人々。(Amir Levy/Getty Images)

数週間後、それまで健康だった22歳のイスラエル人女性が死亡した。しかし、イスラエル政府高官や米国防総省の研究者から説明があったにもかかわらず、CDCもFDAもこの問題に関して国民に警告しなかった。

イスラエル政府と同様、米国防総省も予想以上の心筋炎の症例数を記録していた。患者のほとんどは若くて健康な男性だった。

2021年4月、CDCは軍関係者との非公開の会合を2回にわたって行なった。少なくともどちらかの会合で、軍関係者がCDCにデータを提示していた。そして、提示された米軍内部の患者の予備データとその分析結果は、心筋炎が新型コロナのmRNAワクチンの副作用である可能性を示していた。ファイザーとモデルナは、このmRNA(メッセンジャーRNA)をワクチンに使用している。

これらの事実は、会合の関係者の一人であるジェイ・モンゴメリー医師がエポックタイムズに電子メールで語ったものだ。提出されたデータは一般には公開されていない。

会合後の2021年4月27日、当時CDC所長だったロシェル・ワレンスキー氏は、ようやくこの問題について公の場で語った。この日、ホワイトハウスでの会見でワレンスキー氏は、「ワクチン接種後に心筋炎になったという報告は見たことがない」と述べた。

しかし、それは間違っていた。2021年3月末までに、CDCのワクチン有害事象報告システム(VAERS)には心筋炎の報告が141件あった。また、同じくCDCが運営するワクチン安全性データリンク(VSD)にも24件の記録があった。

また、エポックタイムズが入手したCDCの内部メールによって、ワレンスキー氏が会見の前に、心筋炎とその関連疾患である心膜炎をめぐる議論に関してやり取りしていたことが分かっている。ワレンスキー氏は、カリフォルニアの医師がこの症例を目にしているという情報を受け、「とても役に立つ情報だ」と返している。

しかし、会見でワレンスキー氏は、記者団に対し「安全性シグナルは見ていない。実際、意図的に2億回以上の投与に関するシグナルを探した」と述べていた。

2023年6月5日、メリーランド州ホワイトオークに本部を置く米国食品医薬品局(FDA)(Madalina Vasiliu/The Epoch Times)

発見された安全性シグナル

FDAは2020年後半にファイザーとモデルナのワクチンを承認した。

CDCとFDAはVAERSのデータを監視することになっている。VAERSは、ワクチンが引き起こす可能性がある問題に対する国の「早期警告システム」であると当局者らは表現している。

しかし彼らは、2021年2月18日に現れた新型コロナワクチン接種後の心筋炎に関する安全性シグナルを、比例報告比(PRR)と呼ばれる統計分析手法で検出できていなかった。米国ワクチン情報センターが保管するVAERSデータを元に、エポックタイムズが確認している。

CDCは当初、2021年2月にPRR法を開始したと発表したが、後にそれは誤りだったと認め、今では2022年まではPRR法を開始していなかったと述べている。エポックタイムズが入手したファイルによれば、CDCが心筋炎のシグナルを検出したのは、初めて完全なPRR法を実施してからだった。

「彼らがこのシグナルに気づかなかったとは考えられない」と、ブライアン・フッカー氏はエポックタイムズに語った。非営利団体「チルドレンズ・ヘルス・ディフェンス」の科学・研究シニアディレクターであるフッカー氏は、別の方法でVAERSに心筋炎の早期シグナルを検出していた。

「彼らは米国防総省から警告を受けた。イスラエル保健省からも警告を受けた。知らなかったとしても、警告を受けていたのだから、弁解の余地はない」

チルドレンズ・ヘルス・ディフェンスは、子供の伝染病の撲滅をミッションとして掲げる非営利団体だ。イスラエル政府とCDCの間の電子メールを最初に入手したのは、この団体だった。

ワレンスキー氏はすでにCDCを去っている。心筋炎に関する彼女の主張についてコメントを求めても返答はない。

CDCの広報担当者はエポックタイムズ宛の電子メールで次のように語った。

「CDCは、新型コロナワクチンが米国で投与され始めて以来、その安全性を継続的に監視してきた。所長が会見を行なった時点では、新型コロナのmRNAワクチン接種後の心筋炎に関する安全性シグナルがあると結論づけるに足る十分なエビデンスがCDCにはなかった」

CDCは2021年にはPRR法を実施していなかったと発表したが、実際は別の分析手法に頼っていた。それは、経験ベイズ法によるデータマイニングと呼ばれるものだった。しかし、この方法がいつ最初に心筋炎のシグナルを検出したのかは分かっていない。

この方法を活用するFDAは、関連する質問への回答を拒否している。またCDCは、エポックタイムズに対し、2022年にPRR法を用いて検出した心筋炎のシグナルはデータマイニングの結果と一致していると述べている。

2021年3月19日、アトランタにある米疾病対策センター(CDC)の緊急オペレーションセンター (Eric Baradat/AFP via Getty Images)

CDCもFDAもVAERSデータの処理に業者を利用している。

エポックタイムズが入手した電子メールの中で、CDCのある職員は、「FDAでさえ受託業者がどのようにデータマイニングを行っているのか、その仕組みをよく知らない」と述べている。このCDC職員とFDAは、上記の発言に関するコメント要請には応じなかった。

「安全性シグナル」とは、医薬品との関連が疑われる有害事象に関する情報のことだ。シグナルを立証するにはさらなる調査が必要であると当局は説明している。

米国の心臓専門医であるアニッシュ・コカ氏は、「安全性シグナルが出たら、『この医薬品を使っても構わないが、我々はリスクを発見しており、調査中であることを理解してほしい』と警告したほうがいいのではないか」とエポックタイムズに語っている。

なぜこの問題は十分に検証されなかったのか。その理由の1つとして、ワクチン接種の一時停止につながる可能性があったことが考えられる。2021年4月13日、CDCとFDAは、血栓症の症例が少なからずあったことを受け、ジョンソン・エンド・ジョンソン製のワクチン接種を一時停止した。

ある軍関係者は、メールでのやり取りで、「ジョンソン・エンド・ジョンソン製のワクチン接種が血栓のせいで止められたのと同様に、ファイザー・モデルナ製のワクチン接種が止められたら、接種率に悪影響を与えるだろう」と述べていた。エポックタイムズが情報公開法に基づく開示要求によって入手したCDCの内部メールによって明らかになった。

2021年2〜5月までの間に、新型コロナワクチンを接種した米国人口の割合は14.2%から50.5%へと急増した。

「ワクチン接種率を下げないための戦略的な行動だった可能性が高い」とフッカー氏は指摘した。

有害事象の報告は滞っていた

CDCのワレンスキー所長が「ワクチン接種後に心筋炎になったという報告は見たことがない」とはっきりと発言した翌日、あるCDC職員は、VAERSへの報告があまりにも多く、処理に難儀していると内々に認めていた。

職員は「現在、多数の報告を受けているため、処理に通常より時間がかかっている」とメールで述べた。このメールは、息子の心筋炎についてVAERSに報告したのに数日経っても報告がシステム上に表示されないと訴える女性に宛てて送られた。

同じ頃、CDC職員のエレイン・ミラー氏も、VAERSへの報告の処理が遅れていることに言及していた。

ワクチン接種の開始以前、CDCから業務委託されたある業者は、有害事象報告は1日あたり1000件を超えないだろうと見積もっていた。しかし、ワクチンが承認されて3週間も経たないうちに、報告数はその予測を超えて急増した。エポックタイムズが入手した CDCの内部文書によって、明らかになった。

受託業者であるジェネラル・ダイナミクス・インフォメーション・テクノロジー社の作業員は、処理速度を上げても、「現在の人員レベルでは急増する報告に追いつかない」とCDCに報告していた。

300人近くの追加スタッフを雇った後でも、報告の滞留件数は94,000件近くにまで増えた。

2021年1月、オハイオ州に住むアダム・ハーシュフェルド医師(36歳)は、新型コロナワクチン接種後に心筋炎を発症し、すぐにVAERSに報告した。しかし、CDCから返事が来るまで数ヶ月かかった。「それまでに死んでいた可能性もあった」とハーシュフェルド氏はエポックタイムズに語った。

2021年2月16日、ロサンゼルスのワクチン接種会場にて、モデルナ製の新型コロナウイルスワクチンが入った注射器のトレイを持つ医師助手 (Apu Gomes/AFP via Getty Images)

新型コロナワクチンを投与する医療従事者は、心筋炎を含む重篤な有害事象をVAERSに報告する義務を負っている。しかし、CDCの内部メールによって、すべての医師が規則に従っていたわけではないことが明らかになっている。

2021年5月17日、CDCのワクチン安全性に関する最高責任者、ジョン・スー氏は、「医療関係者はこれらの症例をVAERSに報告していない」と同僚に告げ、「心筋炎のようなもの」が「爆発している」と述べていた。

また同時期に、複数のCDC職員がワシントン州当局者とのやり取りの中で、「ワクチン接種後の心筋炎の症例9件がVAERSに報告されていない」と述べていた。

こうした報告の滞留は最終的には解消された。VAERSのデータによると、2021年3月末までに146例の心筋炎または心膜炎が報告された。2021年4月にはさらに158例が報告され、5月にはさらに487例が報告された。

内部発表によると、2021年4月26日までにVAERSに報告された症例のうち、5月3日時点で完全に処理されたのはわずか3分の1に過ぎなかった。

それなのに、ワレンスキー氏の誤った主張に加え、CDCは他の保健当局者やメディアに対し、2021年5月か6月までいかなる報告も受けなかったと虚偽の説明をしていたことが、内部メールで明らかになっている。

CDCが運営するもう一つのワクチン安全性モニタリングシステムであるV-safeは、新型コロナワクチンが認可される前にCDCとFDAが心臓の炎症を「特に注目すべき有害事象」ないし「副作用の可能性があるもの」として特定していたにもかかわらず、心筋炎を重篤な有害事象として挙げていなかった。

同じくCDCが運営するワクチン安全性データリンク(VSD)は心筋炎を有害事象に挙げていたが、2022年までシグナルを検出しなかった。おそらく症例の定義が狭すぎるのが原因となったのだろう。

FDAとそのパートナーである薬局大手CVSなどが運営する4番目のシステムは、2023年にシグナルを検出している。

Lia Onely
イスラエル出身のエポックタイムズ記者
メリーランド州に拠点を置く大紀元のシニアリポーター。主に米国と世界のニュースを担当。