追加接種の展開
米当局は当初、モデルナ製かファイザー製のワクチンを1,2回接種すれば予防効果があると宣伝し、その後の接種については何も示さなかった。
しかし、2021年半ばになると、ワクチンによる予防効果が時間の経過とともに損なわれるとするデータが出てきた。
2021年9月22日、米国食品医薬品局(FDA)は、18歳以上の多くの米国人を対象に、失われた予防効果を少しでも回復させるため、ファイザー製ワクチンの追加投与を許可した。FDAが依拠したのはわずか306人を対象とした臨床試験のデータで、その試験では心筋炎の症例が報告されなかった。また、追加接種の有効性に関するデータは提供されていなかった。
FDAが追加注射後の心筋炎リスクは不明とした一方で、イスラエル当局は、同年初秋の追加接種開始後に心筋炎の症例がすでにあったと述べていた。ファイザー製ワクチンの追加接種の試験では、1人が心筋炎の症状として心臓発作を起こした。
米国疾病管理予防センター(CDC)の職員は特定の集団に追加接種を推奨した。CDCは、18〜29歳の集団で追加接種100万回分が最大26件の心筋炎を引き起こし、入院数は最大114件になると予測した。また、この集団では、入院1件を予防するために8,738人の追加接種が必要になると推定された。
その後、成人集団から推測された有効性と安全性に基づき、追加接種は5歳以上のすべての集団に拡大されたが、心筋炎についての言及はなかった。モデルナ製の追加接種もまた、心膜炎の症例を含む試験に基づいて承認され、推奨された。当時のロシェル・ワレンスキーCDC所長は、新型コロナワクチンが「安全かつ有効である」と述べた。
ボストン在住のベン・カトラーさんは、2021年12月14日にモデルナ製ワクチンの追加接種を受けた。当時26歳だったカトラーさんは人生最悪の痛みに苦しみ、病院での治療を必要とした。ワクチンによる心筋炎と診断された。各国が追加接種に対して慎重なアプローチをとっているのに対し、「米国ではなぜか、実際にベネフィットを示すデータもないまま誰にでもワクチン投与しようとした」とカトラーさんはエポックタイムズに語った。
後にCDCのワクチン有害事象報告システム(VAERS)が発表したデータによると、16〜17歳の男性で報告された心筋炎患者の割合は、ファイザーの追加接種100万回当たり188人で、2回目の投与後の割合よりも高かった。18〜29歳の男性におけるファイザーの追加接種後の報告率も予測より高く、100万回あたり36.4人、モデルナの追加接種は100万回あたり64人だった。
その後、韓国の研究者らは、18歳以下の患者のうち、ファイザーの追加接種100万回あたり82人、モデルナの追加接種100万回当たり31人の感染率を割り出した。
追加接種による予防効果が時間の経過とともに薄れ、オミクロン株とその亜種に対するワクチンの効果も低下したことを受け、当局は、一部の集団への2回目の追加接種を許可し、さらに他の集団への3回目の追加接種を許可し、新たに調合したワクチンを推奨するなど、一連の措置を講じた。当局はさらに別の新型コロナワクチンを承認し、推奨したばかりだ。
長期にわたる問題と死亡
ワクチンによって誘発された心筋炎が、長期にわたる問題と死亡の両方を引き起こしていることが、研究者らによって確認された。
例えば、カナダの研究者らによる2023年3月9日の報告によると、ワクチン接種後に心筋炎を発症した集団を2ヵ月後に評価したところ、一部の患者に炎症とむくみが続いていたという。
ほどなくして、イタリアで調査された44人の患者のうち8人でも症状が続いていたことが、同国の研究者らによって報告された。また、追跡画像診断が行われた29人の患者のうち8人から、心不全によるむくみ、つまり過剰体液が検出された。
他の多くの論文でも、症状の持続、炎症、むくみ、などが確認されており、ある追跡調査では、ワクチン接種から数ヵ月後の心臓に瘢痕が見つかった。
一方、死者は2021年初頭から報告され始めていた。少なくとも数例は、ワクチンによる心筋炎が原因であることが裏付けられている。
ニューヨークの大学生であったジョージ・ワッツJrさん(24歳)の死亡診断書では、「新型コロナワクチン関連心筋炎」による死亡とされた。
サウスダコタ州在住のジョセフ・キーティングさん(26歳)の死亡診断書でも、直近のファイザー製のワクチン接種と心筋炎が死因とされた。妹のケイリー・コッチさんは、家族でCDCに連絡を試みたが返答はなかったとエポックタイムズに語った。CDCはエポックタイムズからのコメント要請にも応じなかった。
新型コロナワクチンの接種直後に心筋炎に関連した原因で死亡した若者は他にもいる。テキサス州在住のアーネスト・ラミレスJrくん(16歳)は、ファイザー製ワクチン接種の5日後に倒れて死亡した。検死によって心臓肥大が死因と判明した。心筋炎は心臓肥大を引き起こすことがある。
他国の研究者も、ワクチン接種後の心筋炎による死亡を確認している。
例えば、日本の研究者らは、ワクチン関連の副作用が死因として疑われる54人の死亡者の剖検を分析し、そのうち3人はワクチンによる心筋炎が死因であると断定した。研究では、偶発的な入院を差し引き、基礎疾患によって層別化することで、CDCのモデルを改良し、健康な若者と健康状態の悪い若者を分けて計算した。
研究者らは、当局がこの問題をより詳しく研究し、健康な子供へのワクチン接種を控えているスウェーデンなどの国の例に倣うことを検討すべきだと述べた。
トレーシー・ベス・ホーグ医師は、この研究を受けて米当局は変更を加えるだろうとエポックタイムズに語った。主な選択肢は、子供への予防接種を一時停止するか、推奨接種回数を2回から1回に減らすか、健康な子供への推奨を取り消すかだとした。
「そうなることを期待していたのに、まったくそうはならなかった。なぜ彼らは調査もせずに推し進め続けるのだろうか。私にはとても無責任で危険なことに思えた」と彼女は述べた。
接種停止の要請
CDCは、健康状態やその他の要因に関係なく、12歳以上のすべての人が予防接種を受けるべきだと主張したが、医師やその他の専門家の間では、画一的なアプローチに反対する声が高まっている。
米国国立衛生研究所(NIH)傘下の国立アレルギー・感染症研究所の感染症専門家マージョリー・スメルキンソン氏もその一人だ。
「成人に対してジョンソン・エンド・ジョンソン製ワクチンが停止されたのと同じように、子供に対してファイザー製ワクチンを一時停止してはどうだろうか。あるいは投与は1回で良いか検討してみてはどうか。なぜこのようなリスクの低い集団のために急ぐのか」と、スメルキンソン氏は2021年6月2日にツイッター(現X)に投稿していた。
カリフォルニアの疫学者ヴィネイ・プラサド氏もまた、心筋炎を「若い男性における明確で大きな安全性シグナル」と呼んだ。
しかし、CDCに味方する医師や保健当局もいた。
イスラエルのテルアビブ・ソウラスキー医療センターの循環器科入院部長であるオファー・ハバクック氏は、エポックタイムズに次のように語っている。
「ワクチンと関連しているかもしれない症例があったと同時に、他の何万人ものワクチン接種者が無事だったという事実は、接種の一時停止を正当化しない」
イスラエルと米国は積極的なワクチン接種キャンペーンを崩さなかったが、心筋炎患者の発生を受け若年層の接種を見送ったり制限した国もあった。たとえば香港では、当局が接種を2回から1回に減らした結果、心筋炎の患者数は激減した。
米国の心臓専門家であるアンドリュー・ボストム氏も2021年、心筋炎の問題がより詳細に調査されるまで若年者へのワクチン接種を一時停止するよう、英国の病理学者クレア・クレイグ氏と共同で当局に呼びかけた。
ボストム氏はエポックタイムズに、「私たちは調査が終わるまでは一時停止するよう要求していた」と語った。天然痘ワクチンで行われたような、ワクチン接種前後の心臓の健康状態のマーカーを測定する前向き研究が、この問題を解明する上で重要になるだろうとボストム博士は言う。
米国の心臓専門医であるアニッシュ・コカ氏は、「健康な若い人たちを対象とした試験を行うべきだったと思う。子供を被験者にする親はたくさんいたはずだ」と述べた。
どうやら、2023年までに前向き研究を終了する米国の研究者はいないようだ。2022年後半までアンソニー・ファウチ博士が率いた米国国立アレルギー・感染症研究所は、前向き研究に資金を提供する可能性が最も高い機関だが、コメントを要請しても返答はなかった。
FDAはワクチンを承認する際、ファイザーとモデルナにワクチン接種後の心筋炎に関する研究を開始するよう要求したが、研究結果はまだ公表されていない。ファイザーの研究は終了日が延期されたが、モデルナが期限を守ったかどうかは不明だ。FDAはモデルナにコメントを求めたが、返答はなかった。
打ち消された通説
現在までに完了した前向き研究はわずかだ。
タイの学生を対象に、ファイザー製ワクチンの2回目接種前後の心電図を測定した結果、29%の青少年に心血管系への影響が見られ、301人中7例の心筋炎ないし心膜炎が検出された。
台湾では、2回目接種の前後に心臓エコー検査を受けた学生の1%が異常値を示し、17%が心臓に関する症状を少なくとも1件訴えた。
ワクチン接種を受けた人を対象に、追加接種前後の前向き研究を行った研究者もいた。
イスラエルの研究では、324人の参加者のうち2人に心臓損傷のエビデンスが見つかった。ドイツの研究では、心膜炎患者が41人中1人検出された。日本の研究では約3,800人のうち2人に心筋炎が見られた。スイスの研究では35人の医療従事者のうち1人に心筋炎の兆候が見られた。
現在までに米国で行われた唯一の前向き研究では、成人の血管機能に対するワクチンの影響に焦点が当てられている。その結果、2回目の接種で症状が増加することが判明した。
さらに、ワクチン接種後の心筋炎による死亡例(突然死を含む)は、早いものでは2021年から報告されている。
ワクチン接種後の心筋炎の推定発生率はますます増加した。
CDCは当初、男性の青少年では、2回目の接種100万回あたり62.8人の症例が報告されたと発表した。その後、2021年にイスラエルの2組の研究グループが、若い男性の2回目の接種100万回あたり107〜136人の症例を報告した。
FDAは2021年末に、16〜17歳の男性における心筋炎の超過リスクは、100万回接種あたり200症例に近づくと発表した。その直後、米国の研究者グループは、12〜39歳の男性における2回目の接種100万回あたりの発症率を195.4件と推定した。彼らは、CDCの研究者が見落としていた患者を発見した。
2022年初頭のCDCの報告によると、16~17歳の男性で報告された症例数は2回目の接種100万回あたり105.8人に上り、イスラエル当局の報告によると、16~19歳の男性で報告された症例数は2回目の接種100万回あたり153人に上った。
最近、325件の剖検例を調査した米国の研究者らが、新型コロナワクチン接種がこれらの死亡例の約4分の3を引き起こした、あるいはその一因となったことと、そこに9件の心筋炎が含まれていたことをプレプリント(査読前論文)で明らかにした。
CDCは、新型コロナのワクチン接種が開始されて以来VAERSに報告された死亡例を調査している間に入手した剖検報告書の提供を拒否している。また、ワクチン誘発性心筋炎による死亡の記録はなく、ワクチン安全性データリンクからの新型コロナワクチン接種後の死亡に関するデータもないと主張している。
FDAは、新型コロナワクチン接種後に死亡した人々の検死結果を求める要請を拒否し、この件に関する異議申し立てを却下した。
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