ヒットラーの過ちを習近平が再現する可能性

2023/10/01 更新: 2023/11/14

中国の異常な動き

中国では人民解放軍の高官が相次いで消息不明や解任が相次いでいる。そんな状態でも中国は台湾への軍事的圧力を継続している。台湾から見れば人民解放軍の異常な動きと認識し対応をしているが無意味に緊張を高める状況が続いている。

人民解放軍の国防相の動静が不明となれば指揮命令が誰に有るのか判らない。これでは外国から人民解放軍に連絡できない状態となり衝突回避を行なうことが難しくなる。このため外国では中国の指揮命令を不安視する声も出る。これは習近平の統治への不安であり台湾問題の悪化を懸念する材料になった。

逆効果になった軍事的圧力

人民解放軍の高官が相次いで解任される状態で台湾への軍事的圧力が続いているが、これは中国の暴発を懸念すると同時に台湾に国防を意識させる逆効果の結果を生んでしまった。何故なら人民解放軍の高官が不在なら軍政を持つ習近平に人民解放軍高官は軍令の補佐を行えない。

軍政:宣戦布告・停戦・休戦・国軍に戦争の政治目的を付与する。

軍令:軍隊の組織と運用は経験則に従い原則として自由。

国防大臣:軍政の補佐

参謀総長:軍政に適した作戦戦力・作戦期間・戦域設定としての軍令の補佐

これは習近平が軍政に適した作戦戦力・作戦期間・戦域設定などの知識を得られないことを意味する。台湾軍がこのことを理解しているから習近平の不利な状況が丸わかりになり逆効果だと認識した。軍政と軍令の意味と関係を理解すれば習近平は独裁者として強権を発動したことで自ら不利な状況に導いている。

軍政を持つ政治家が軍政に適した作戦戦力・作戦期間・戦域設定の情報が欠落すれば地図とカーナビが無い状態で目的地に行くようなもの。車を走らせて出会った人に目的地を聞きながら移動するが、時に嘘を教えられて間違った方向へ移動するとしたら?そんな不利な状況に自ら追い込んだのだ。

軍令を無視したヒットラーの失敗

軍令を無視した独裁者ならばヒットラーは典型例。第二次世界大戦が始まりドイツ軍がフランス侵攻を行なうとイギリス・フランス軍をダンケルクまで追い詰めた。この時イギリス・フランス軍はドイツ軍の攻撃に耐えながら40万人の将兵がイギリスまで撤退するダンケルクの戦い(1940年5月24日から6月4日)が発生した。

ダンケルクの撤退は成功したが、これはヒットラーがドイツ軍司令部の軍令を無視したことが原因。当時のドイツ軍司令部は敵軍撃破を主張したがヒットラーは拒否して意図的に脱出させることを選んだ。これはヒットラーが士官教育を受けていないことと外交を知らないことが原因だ。

国家戦略=外交×軍事

外交は軍事を背景に行なうのが国際社会の基本だから軍隊を撃破されると交戦国は外交を失うことになる。つまり外交×0=0になるから交戦国は和平交渉に応じることになる。だがヒットラーは知らないからイギリスに穏便に対応すればイギリスは和平交渉に応じると思い込んでいた。結果はドイツ軍司令部の主張が正しくイギリスは徹底抗戦を選んだ。

さらにヒットラーはイタリアの尻拭いで失敗を犯した。イタリアが北アフリカで大敗すると代わりにドイツ軍を北アフリカに派遣した。これは軍事的に無意味どころかイギリスを狂喜乱舞させるほどの結果を生み出した。

何故なら当時はドイツ軍によるイギリス上陸作戦が予想されておりイギリスは遠く離れた場所に新たな戦線を作ることを望んでいた。理由は本土から戦場を遠く離すのが基本だから新たな戦線を作るとドイツ軍はイギリス上陸が困難になる。実際にドイツ軍はイギリス上陸作戦の前哨戦としてイギリスから制空権を奪うバトル・オブ・ブリテンを開始。

このためイギリスは強引に北アフリカ戦線を拡大しドイツ軍を拘束することに成功した。北アフリカ戦線では砂漠の狐と渾名されたロンメル将軍が有名になったが、結果的にイギリス上陸作戦に使う戦力を北アフリカ戦線に拘束してしまった。ドイツ軍はバトル・オブ・ブリテンで制空権を獲得できず、北アフリカ戦線が拡大したことでイギリス上陸作戦を放棄。これでイギリスは本土を守ることに成功した。

ロンメル将軍は連合軍を知る名将でありヒットラーは連合軍の上陸を警戒し大西洋の壁を作らせるためにロンメル将軍を担当させた。ロンメル将軍は連合軍との戦闘経験から防御陣地の構築だけではなく増援を短時間に送り込める様にしていた。だがヒットラーは軍令を無視しヒットラーの許可が無ければ増援を動かせない様にした。

連合軍によるノルマンディー上陸作戦は映画では30分ほどで成功しているが映画としてテンポと迫力の有るシーンを選んでいるだけで実際は8時間なのだ。つまり軍令を無視したヒットラーはロンメル将軍が構想した反撃作戦を破砕しヒットラー自ら敗北する道を選んだ。ヒットラーがノルマンディーに増援を許可した時には既に連合軍は橋頭堡を確保していたので増援は無意味になりヒットラー自ら貴重な8時間を失ったのだ。

習近平がヒットラーの過ちを再現する

習近平は明らかに人民解放軍の軍令を無視している。こうなると軍政に適した作戦戦力・作戦期間・戦域設定を知らないからヒットラーの様に自ら敗北の道を辿ることは間違いない。これが台湾侵攻だとしても勝利するための戦力と物資が何時まで続くかの試算を聞き、人民解放軍が活動できる作戦範囲を知らないと無意味に拡大して敵軍に撃破される結果になる。

ヒットラーが無意味に戦域設定を拡大したのが北アフリカ戦線。ドイツ軍司令部は北アフリカ戦線に消極的だったがヒットラーが実行させたことでイギリス上陸作戦に使う戦力が失われてしまった。

実際に習近平はインド・南シナ海関係国・台湾・日本・アメリカなどと対立し無意味な戦域設定の拡大をしている。インドと台湾は中国の反対に位置しているので二正面作戦を強いられる可能性が有る。それに中国が台湾侵攻を行なうとインドには好都合。これほど習近平はヒットラーの過ちを再現する能力に優れている。

最も恐ろしい未来は短期決戦で勝利を求める習近平が核兵器を使う可能性だ。軍令を持つ軍人は勝利のために最適解を求める。同時に自軍の損害を抑えながら勝利を追求するから全てを失う核戦争を回避する。

実際に核兵器で睨み合った東西冷戦がそうだった。だが習近平は人民解放軍の高官を相次いで解任していることは、台湾侵攻や核兵器の使用を拒否した者を解任した可能性が有る。仮にそうだとすると習近平は反対者を排除して核兵器を使った台湾侵攻を実行するかもしれない。

戦争学研究家、1971年3月19日生まれ。愛媛県出身。九州東海大学大学院卒(情報工学専攻修士)。軍事評論家である元陸将補の松村劭(つとむ)氏に師事。これ以後、日本では珍しい戦争学の研究家となる。
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