中国は今、どこもが深刻な財政危機に陥っている。そのようななか、一部の地方政府は、公務員に対して「銀行からお金を借り、それを政府に貸すよう」強要していることがわかった。
貴州省のある県(市の下、日本の「町」に相当)に勤務する公務員が、ある「任務」を受けたことを明かす今月10日付のSNS投稿が注目を集めている。その「任務」とは、県ではたらく公務員が「個人名義で銀行から融資を受け、その金を県政府に貸すようにせよ」というものだ。
この「任務」の目的は、県政府の破産を防ぐためだ。任務として割り当てる金額には「5万元(約100万円)」「20万元(約400万円)」「50万元(約1千万円以上)」と段階が設けられている。一般職員から上級職員まで、ポストが上であるほど「貸付任務の金額が高くなる」という。
もはや「禁じ手」さえ辞さなくなった地方政府の、末期症状の現れであろう。しかし、延命のための「強心剤」をいくら打っても、地方財政が回復する見込みは全くないのが現状だ。
これは本来、公務員の職務上の行為として法的に問題があるはずだが、それは問われていない。仮に、役所が公務員個人から「借金」をした場合に、その金額に見合う担保や保証人がいるわけではないので、当然ながらこの「借金」は、経営不振にあえぐ役所に踏み倒される可能性が高い。
はじめから金をドブに捨てるようなものだが、名目上、公務員からの「借金」は地方政府が返済することになっている。とは言え、もとより利子収入を期待できる安定的な投資ではない。その公務員は今後、地方財政破綻のリスクとともに、巨大な「恐怖心」を背負わなければならないだろう。
このことに関するSNS投稿には、「いまや多くの地方政府が、同じような事をしている」「山東省では、公務員がお金を地方政府に貸さなければ解雇される。そのため、50万元(約1千万円以上)のローンを組まされた人もいる」など、同様の事態が中国の各地で起きていることを示すコメントが多く寄せられた。
確かに、貴州省に限らず、他の地方政府も公務員に貸付を要求していることを伝える投稿がSNSに相次いでいる。
「一般職員は5万元。その上の役職は10万元」というように、貸付金額を設定している某地方政府もある。今年1月ごろの時点で、山東省のある地方政府では「一般公務員は50万元(約1千万円以上)。その上のポストは150万元(約3,000万円)あるいは200万元(約4,000万円)」などと、役職に応じ「任務」として割り当てられる金額も高くなっている。
しかも多くの場合、この「任務」を与えられた公務員は、貸してくれる銀行を自分で探して借金しなければならないという。
このような状況について、「地方政府は、あまりにも多額の負債を抱えている。そのため、地方政府が銀行からお金を借りることが、非常に困難になっている背景があるのだろう」とする分析もある。
つまり役所が、職員に対して「もう銀行は、金欠の役所に融資してくれない。だから君たちが、個人名義で金を借りてこい!」と言い出したのだ。
昨年9月、甘粛省蘭州市の公共交通である路線バス企業も、各職員に対して「銀行から個人名義で借りた金を、会社に渡すよう求める文書」を発行していたことがわかった。そうする目的は「職員に給料を支給するため」というが、本末転倒も甚だしい。
今年に入ってから、中国の多くの地方政府が「職員の給料を支給できない、あるいは支給が遅延している」状態だという。
中国の主要都市である北京市や南京市の一部の区政府は、自区の職員の給与支払いなど各種の支出に充てるため「他の区政府から借金している」ことも明らかになっている。
中国経済は今、とくに地方において、もはや「修羅場と化している」とみて間違いない。
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