中国では今、短い秋が終わり、これから寒冷の冬を迎えようとしている。
今年8月「ほとんど人為的な洪水」の被害に見舞われた河北省や北京の被災地では、厳冬期ともなれば零下10数度の極寒になる。かろうじて命は助かったものの、家も財産も失った被災者は、一体どのようにしてこの冬を過ごすのだろうか。
中国は大陸性気候であるため、河北省よりだいぶ南へさがった安徽省や江蘇省であっても、冬には寒気の影響で雪も降るし、氷点下まで冷え込む。今はまだ晩秋だが、すでに夜風は冷たい。
その江蘇省で撮られたある動画が最近、華人圏のSNSで拡散されている。
動画につけられた説明の文字や投稿者コメントによると、この動画は10月29日の深夜、江蘇省淮安市の街中で撮られたものだという。そこに映っていたのは、一人の年老いた男性であった。
動画の画面には、つけられたタイトル字幕で「冷たい地面に寝ていたのは、野菜売りのおじいさん(看到売菜大爷躺在氷冷的地上睡覚)」とある。
老人が横たわっていたのは歩道で、その横には、わずかばかりの「売り物の野菜」が置かれていた。
この動画を撮影した人は、心優しい女性だった。病院で点滴をした後、帰宅途中だったという。
女性は手持ちの120元(約2500円)をおじいさんに渡して、その野菜を全て買った。「これじゃあ、もらいすぎだよ」といって遠慮するおじいさんに、女性は「おつりはいりませんよ。早くお家に帰って、寝てください。お大事にね」と告げた。
その後「野菜売りのおじいさん」は、女性にお礼を言い、おんぼろ自転車の荷台に薄汚れた寝袋を括りつけて、深夜の街を家へと帰っていった。
家はどこにあるのか、世話をしてくれる家族はいるかなどは聞かなかった。もちろん、それでいいと女性は思った。
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