アングル:トランプ氏が米大統領選で勝利できる4つの理由

2023/12/13 更新: 2023/12/13

[ワシントン 12日 ロイター] – トランプ前米大統領は2回も弾劾され、2020年の選挙で敗北した後は平和的な政権移行を妨げようとした。さらに幾つもの刑事訴追に直面し、批判派からは専制君主になろうと画策しているとまで警戒されている。それでも、トランプ氏が大統領の座に復帰する可能性は残っている。

野党共和党の大統領選候補指名レースでは、トランプ氏がライバルたちに支持率で50ポイント近くの大差をつけてリードしていることが各種世論調査から分かる。1期目の大統領時代にあれほど打ちのめされ、屈辱にまみれたように見える人物としては特筆すべき復活ぶりだ。

来年11月の大統領選本選でも、与党民主党候補指名が確実視される現職のバイデン氏に対して、トランプ氏が勝てる理由を以下に4つ挙げた。

◎有権者の憂うつ

バイデン政権は経済が良好な状態にあると主張している。確かにトランプ氏が政権を去った際に6.3%だった失業率は過去最低に近い3.9%まで低下し、昨年6月に9%を超えていた物価上昇率は今年10月段階で3.2%に鈍化した。

ただ、有色人種や若者などを含む多くの有権者の見方は異なる。彼らが強調するのは、食料品や自動車、住宅、子育て、老人介護といった日常生活に不可欠なモノ、サービスの値上がりに賃金が追い付いていないという点だ。

バイデン氏が経済について話をする時、国民はマクロ統計ではなく、価格の手頃さや手に入れやすさに思いをはせる。複数の世論調査では、トランプ氏が非常に漠然とした提案しかしていないにもかかわらず、共和党の方が民主党よりも適切な経済運営をしてくれるとの見方が圧倒的に多い。

◎恐怖心への訴え

有権者は、経済だけでなくもっと幅広い理由から不安を抱えている。トランプ氏が言及するのは、それが本当かどうかはともかくとして、米国の多様性が加速して文化的にリベラル色が強まっている、という多くの白人層が持つ懸念だ。

また、持ち家やインフレに見合う賃金上昇、大学教育といった国民の生活にとって土台部分になっている要素が、多くの人々には一段と手が届きにくい存在になりつつあるという「喪失感」も広がっている。

世論調査によると、有権者は犯罪を懸念し、メキシコとの国境から押し寄せる不法移民を巡る問題にも不安を感じている。

トランプ氏は、このような恐怖心を巧みに操りながら、自らを既存の米政治システムのアウトサイダーとして演出。まるで放火犯と消防士の「一人二役」のように、米国が混乱に陥っていると触れ回る一方で、自分こそが救世主だとアピールしている。

◎大統領の適性否定されず

共和党の反トランプ派や、民主党、メディアなどはトランプ氏は大統領として不適格だとみなしているが、何百万人もの有権者はそれに同意していない。

実際、トランプ氏支持者の多くは、同氏は政治的な魔女狩りの犠牲者だと確信するようになっている。ロイター/イプソスが今年行った調査では、共和党員の少なくとも半数は、トランプ氏が有罪判決を受けても、同氏に投票することに問題はないと回答した。

トランプ氏は統治能力を疑問視する声に対しては、1期目の4年間は時折混乱があっても行政組織はおおむね機能していたと反論できる。「ロシアと共謀している」という同氏にとって最悪の言説も立証されたわけではない。

◎評価されないバイデン氏の政策

バイデン政権は今のところ、インフラ整備やクリーンエネルギー、半導体内製化といった分野に向けた大規模な公共投資を通じた雇用創出政策が国民の生活を改善したのだ、と有権者の大半を説得することに成功していない。トランプ氏はそこにつけ込むことができる。

外交面でもバイデン氏の一連の戦争への関与が、国民の分断を招いている。そうした中で、国際問題に立ち入らず「米国第一」を掲げるトランプ氏は、より伝統的で国際問題に介入する外交政策を推進するバイデン氏に比べて、有権者の心をつかむかもしれない。彼らは、米国がウクライナやイスラエルの戦争にこれ以上かかわるのを恐れているからだ。

もちろん、これでトランプ氏の当選が確実というわけではない。

トランプ氏は依然として、米国の多くの地域や年齢層で人気が著しく低く、もし共和党の正式な候補に選出されれば、同氏の勝利を阻止しようと選挙に足を運ぶ有権者が増え、民主党に有利な形で投票率が上がってもおかしくない。

バイデン氏に勝つためにトランプ氏は、共和党穏健派や無党派層の支持も必要になる。ただ、例えば政敵を「寄生虫」とけなして復しゅうをほのめかすような物議をかもす発言内容のせいで、そうした人々は背を向けかねない。

民主党側は、昨年の議会中間選挙などの一連の選挙戦で、人工妊娠中絶の守り手という立場を前面に出して共和党に勝利してきただけに、来年の選挙でもこの問題を中心的な争点に位置づけるだろう。

とはいえ大統領選まであと11カ月という現時点で見れば、トランプ氏は大統領退任以降で最も返り咲きの可能性が高まっている。

Reuters
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