2024年には、世界経済の60%以上、世界人口の半数以上を占める国々で国政選挙が予定されている。金融市場や世界情勢に大きな影響を与えると予想される。Morningstarは過去の経験から、この種の「イベント・リスク」による「大きな変化は株式や社債の売りを引き起こす可能性がある」と指摘した。
2024年には70か国で選挙が相次ぎ、世界的な「選挙イヤー」となった。
1) 1月13日 台湾総統選と立法院総選挙
背景
与党・民主進歩党は、野党である国民党と民衆党と、総統の座および立法院の議席を争っている。
市場リスク
台湾は米中緊張において、主要な火種となっている。 投資家は関税の引き上げを懸念し、中国への投資を大幅に削減している。
米国当局者は、中共(中国共産党)が2024年に本格的な台湾侵攻を行う可能性は低いものの、先端チップ(ウェハー)製造が停止されたり、世界経済に年間で1兆ドルもの生産高減少をもたらす可能性など、世界市場に壊滅的なリスクをもたらす可能性があると指摘した。
2)3月10日から 欧州で一連の選挙
3月10日 ポルトガル 総選挙
6月9日 ベルギー 総選挙
6月6日から9日 欧州議会議員選挙
日付が未定ながら、秋冬にクロアチアの議会選挙、11月にルーマニアの議会、大統領選挙、他にオーストリアの議会選挙が行われる。
背景
昨年11月、オランダではへルト・ウィルダース氏が率いる自由党が衝撃的な勝利を収め、右派勢力の勢いを増した。 オーストリアの自由党も世論調査でリードしている。ポルトガルのチェガ党は得票率が倍増する可能性があるが、左派政党が優勢を維持する可能性がなお高い。
欧州議会での勝利に取り組む右派政党は、移民政策の規制強化を公言している。ウクライナへのさらなる支援の問題が注目されている。
3)3月17日 ロシア大統領選
背景
世論調査によれば、ロシアにおけるプーチンの支持率は80%を超えている。 野党の政治家たちは、この選挙は計画される「模擬」民主主義だったと指摘した。
市場リスク
選挙戦では、プーチン氏はウクライナ戦争についての見解をさらに明らかにするかもしれない。
日米などの西側諸国政府は、ロシアの中央銀行が海外で保有している現金や国債などの凍結資産の差し押さえを検討している。 ロシアは、そうなれば報復すると表明した。
ロシア経済は、戦争による国防費の急増によって押し上げられてきたが、急激なルーブル安に端を発したインフレが金利上昇を余儀なくさせている。
4)4〜5月 インド
背景
モディ首相は国政選挙で親ヒンズー教のインド人民党(BJP)を率い、首相として3期目の当選を果たすと予想されている。 投資家は中国から資金を引き揚げ、インドに投資している。
市場リスク
インフレの継続がBJPを苦しめる可能性がある。モディ首相が絶対多数を獲得できなかった場合、連立政権の樹立が必要となる。
インドは、米、小麦、砂糖の輸出を制限することで市場を動揺させた。財政ポピュリズムへの回帰は、インドの財政赤字を押し上げるリスクがあり、過去最高となる可能性のある国内市場からの借り入れによる資金調達が必要となる。
5)6月2日 メキシコ大統領選
背景
大統領選挙は、議会再編と9つの州選挙を伴う。世論調査では、与党、国民再生運動(モレナ)党の候補者である元メキシコ・シティ市長のクラウディア・シャインバウム氏が2桁の大差をつけている。
左派ポピュリストのモレナ党は建国から2022 年まで 252 回もの繰り返されてきた憲法の改正を阻止し、よりバランスの取れた議会が期待されている。政権運営にあたって、ロペス・オブラドール現大統領の支出計画の成功を考えると、シェインバウム氏もそれに追随すると予想される。
市場リスク
財政支出の拡大はメキシコ・ペソを下落させ、国債に打撃を与える可能性がある。
6)5〜8月 南アフリカ
背景
与党・アフリカ民族会議は、1994年以来初めて、選挙で議会の過半数を失うリスクに直面する。
経済の混乱、停電、緊縮財政、接待疑惑などが有権者を遠ざけている。「アフリカ民族会議」は野党の「民主同盟」や「経済的解放の闘士(EFF)」と提携する必要があるかもしれない。
市場リスク
選挙前、政府は緊縮財政を緩和し、債務を押し上げる可能性がある。アフリカ民族会議が左派政党と同盟を組めば、社会支出が増える可能性がある。通貨安と財政への懸念から利下げが遅れる可能性もある。
7)11月5日 米国大統領選
背景
トランプ氏は今後数か月の予備選挙で共和党候補の指名を獲得すると予想されている。
トランプ氏は現在、4つの司法管轄区での刑事裁判とその他さまざまな訴訟事件に直面しているが、2020年の選挙は盗まれた(不正があった)ものだと主張している。対立候補のバイデン氏はトランプ氏を民主主義の脅威と呼んでいる。
市場リスク
トランプ氏とバイデン氏の接戦を受け、投資家は社会不安のリスクを懸念するようになるかもしれない。
世界最大の経済大国が積極的な利上げの遅れによる景気後退を回避しようとしている中、厳しい選挙は消費者心理に影響を与える可能性がある。
選挙の結果によってドルが変動する可能性がある。米中緊張に対する警戒感で株価が下落する可能性がある。
政党による歳出削減の公約は、政府の借り入れ増に賭ける米国債取引は根底から覆される可能性がある。
石油にも注目
トランプ前大統領は、バイデン氏が抑制している米国での掘削拡大を支持している。
8)英国総選挙
日付は2025年1月28日までに決定
背景
中道左派のキーア・スターマー候補が率いる野党・労働党は、世論調査で与党・保守党をリードしている。
市場リスク
選挙前、経済の停滞、財政の逼迫により、予想外の支出公約によって国債が不安定になる可能性がある。3月6日の予算案には新たな減税が盛り込まれる可能性がある。
労働党は、住宅建設業者にとってリスクとなる計画規制の緩和や、エネルギー企業に打撃を与えかねない税制改正を計画している。労働党はまた、ブレグジット後のEUとの関係緊密化を望んでおり、これはポンドを押し上げる可能性がある。
9)ベネズエラ
日付は未定
背景
大統領選挙では現職のニコラス・マドゥロ氏が有利。主要野党候補のマリア・コリーナ・マチャド氏は、マドゥロ政権に対する米国の制裁を支持し、元野党指導者のフアン・グアイド氏を支援したなどの容疑により、選挙参加を禁じられている。
市場リスク
10月、米国はベネズエラに対する石油制裁を6か月間、債務制裁を無期限で解除し、公正で自由な選挙を確保するための協議と引き換えに、米国の投資家が一部の債券を取引できるようにした。
制裁が再開されれば、ベネズエラの株式や債券が揺らぐ可能性がある。制裁解除後、ベネズエラの債券は2倍以上に値上がりした。債務再編の可能性も注目されている。
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