中国人が最も大切にする旧暦の元旦は、新暦との関係で前後するが、今年は2月10日であった。それに合わせて、職場の同僚や親しい人達の間で交わされる新年のあいさつは、例年であれば「新年好」あるいは「新年快楽(新年おめでとう)」である。
ところが今年は、例年とは異なっている。今年の新年あいさつのトレンドは「除夕快楽(習近平を排除するのは楽しい)」だというのだ。
中国では、旧暦(農暦)大晦日の夜を「除夕」と呼んでいる。ごく普通の名詞だが、いま中国ではこの「除夕」が敏感ワードになっている。
その理由は、大晦日を意味する「除夕(チューシー)」の夕(XI、シー)の発音が中共党首の「習(XI、シー)」と似ていることにある。そのため「除夕」というと、民衆は「習を除く」つまり「習近平を排除する」という思考につながりやすいのだ。
中共当局は、かつての「白紙革命」のように、民衆がこのワードを利用して習近平独裁体制に対する抗議を巻き起こすことを恐れている。そこで当局は、新年のあいさつにからめて中共の独裁者を排除したい民間の声を、まさに血眼になって消そうとしている。
大晦日の前夜にあたる今月8日、「明日は大晦日だ(中国語:明天除夕)」の話題は一時、中国SNSウェイボー(微博)のホットリサーチ」入りしていたが、後にこの話題は、ホットリサーチから締め出されている。
SNSなどで人気の在米華人で、独立系時事評論家の蔡慎坤氏は14日、中共党員など体制内の知人から極秘に聞いた話として、自身のSNSで次のように明かした。
「今年の年越しで、体制内の人たちはSNS上で新年の挨拶をする際、例年のように新年快楽と言わず、除夕快楽(習近平を排除することは楽しい)という隠語を使う人が本当に多かった。みな口では言わないが、内心ではよく分かっている。それで互いに、グットボタンを送り合っている」
つまり蔡慎坤氏によると、民間ばかりでなく、中共の体制内であっても「除夕快楽」の隠語が存在し、飛び交っていることになる。
体制内部の人間だからこそ、実は現体制が「もう長くない」ことは明白なのだ。そのような意味で「除夕快楽」は、習近平ひとりを除けば良いということではなく、中国共産党終焉への「期待」でもある。
さらに蔡氏は「除夕快楽」について「もはや一種の奇妙な民意になっている」という。
「人々は、このような形でしか感情を発散させることができない。いま中国は、社会全体が意気消沈している。人々は官製メディアが吹聴する『楽観的で上向きの雰囲気』など全く感じられていないのだ。圧倒的多数の人が、この歴史はもう終わらせるべきだ、と考えている」と蔡氏は語った。
蔡氏の投稿に合わせて、青海省の中国人民政治協商会議(政協)の元委員で、現在は海外に在住する王瑞琴氏は、次のようにコメントしている。
「除習(除夕)快楽。つまり習近平による統治を終わらせることは、体制の内外を問わず、さらには国の内外をも問わず、前例のないほど一致した考えだ」
「習近平は今、危険な状態にある。彼による統治は、もう長くは続かないだろう」
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