3月4日から5日にかけて、中国では「両会」と呼ばれる2つの重要会議(全国政治協商会議と全国人民代表大会)が開催される。
このため、開催地の北京では警備が強化されており、とくに市内の交差点や陸橋では常時見張りが立っている。これらは「四通橋事件」の再発を防ぐためと見られる。
交差点や橋の警備をする人員は「守橋員」あるいは「看橋人」と呼ばれている。表向きは本人の意思に基づくボランティアだが、なかにはボランティアではなく、給料をもらう「バイト要員」もいる。
香港紙「明報」によると、両会が始まる前から北京市海淀区の男女の高齢者たちは、すでに持ち場に着いているという。実は3月1日~15日までの期間中、市内のどの地区からも、交差点や橋の警備にボランティアを派遣しなければならないのだ。
「明報」の取材に応じた、あるボランティアの中年女性は、中央企業をリタイアした人だという。「私たちボランティアは毎日、午前8時から午後6時まで交代で橋の警備に当たっている。その他の時間は警察が担当する」とのこと。
このように厳重な警備をする理由として、この女性は「誰かが橋で破壊活動をやるかもしれないから」と語っている。
このボランティアが言う「橋でやる破壊活動」とは、何であるか。
この場合の「破壊活動」とは、反社会的なテロや暴力事件を起こすことではなく、中共の視点から見た「破壊活動」。つまり、中共に異議を申し立てることであり、具体的には「四通橋事件」を模倣する行動のことを指している。
2022年10月13日の正午ごろ、北京市海淀区の「四通橋」の上に、習近平政権を真っ向から批判するとともに、その最高権力者である現国家主席に対して「独裁の国賊、習近平を罷免せよ!(罢免独裁国贼习近平!)」と名指しで罵倒する横断幕が掲げられた。
横断幕を掲げた彭載舟(ほうさいしゅう)氏(本名・彭立發)は、その場で取り押さえられ、当局に連行された。
以来、外界との接触を一切断たれ、その安否もふくめて現在も所在は分からない。彭氏の妻子は郷里で軟禁されている。彭氏の姉まで失踪して、行方不明の状態だという。
この「四通橋事件」は、それに続く中国民衆の示威活動である「白紙革命」や「花火革命」の先駆けとなる。彭載舟氏は「四通橋の勇士」と呼ばれ、以来、中国政府に立ち向かう人々の象徴的存在となった。彭氏は昨年の「世界で最も影響力のある100人」(米誌「タイム」)のリスト入りし、米議員からも「ノーベル平和賞候補」に推薦されている。
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